児童相談所「1人で100例」担当する職員の過酷さ 常に板挟み、警察に訴えられ脅されることも
ただ、家庭訪問といっても、基本的には親御さんがその場で子どもを虐待していることはないですし、1回の訪問で、子育てに困っていると話してくれることもなかなかありません。
子どもも、大抵は親の意向に沿った態度をとるものです。たとえ親が嘘をついていたとしても、「あれは嘘なんだよ」と言える子どもは滅多にいないんです。
そのため、家庭訪問で本当の意味で子どもの安全を確認するのは、難しさが伴います。
子どもの様子を確認したあとは、面接や家庭調査、子どもの心理検査などを行い、最終的に所長を含む全員参加の会議で子どもの援助方針を決めます。
虐待対応は子どもを保護すれば終わりではないんです。その後に施設に入れるのか、里親に委託するのか、あるいは家庭復帰にするのか、児相としての方針を考えます。
決めた方針について親御さんの同意が得られないときには、何回も何回も足を運んで説得して、それでもダメであれば、親権者の意思にかかわらず措置先を決められるように、家庭裁判所に申し立てをすることもあります。
そのための資料作りや情報集めをして、裁判所にも足を運びます。
家庭に戻した場合は、親御さんにも子育てのためのいろんなプログラムに参加してもらったり、在宅で助言をしたりしていく必要があります。
1人当たり100ケース以上を担当
――どのような人員体制で対応しているのでしょうか。
今は大きく分けて、虐待通告の初期対応を行う「虐待対策班」と、「地区担当」という役割があります。
「虐待対策班」は2003年に、より迅速に児童虐待に対応するために設置され、虐待対応の初期調査や、「面前DV」の通告などの対応を担当しています。
「面前DV」は、子どもの前で親が配偶者に対して暴力を振るうことで、心理的虐待の一つとされています。
一方、一時保護をする、施設に入所してもらうなど、子どもと長期的に関わりを持つ場合には、「地区担当」の福祉司が対応することになっています。
私が勤務している江東児童相談所の江戸川区担当は、虐待対策班には7人、地区担当は南北に担当が分かれていて、それぞれ6人ずつ職員がいます。
私は地区担当のチーフなので、直接担当のケースを持たずに、困難ケースに同席したり、職員の育成をしたりしています。
担当を持っている児童福祉司は大体100ケースぐらいを持っています。
できることならば、1人の児童福祉司が30ケースぐらいを担当するのがいいだろうとは思います。