児童相談所「1人で100例」担当する職員の過酷さ 常に板挟み、警察に訴えられ脅されることも
――虐待対応以外にはどのような仕事がありますか。
今は虐待対応が大きく取り上げられているので、「児相=虐待対応をするところ」というようなイメージがあるかもしれませんが、実は児相の仕事はそれだけではありません。
親の家出や離婚、入院をしたときなどに子どもを養育するのが難しいという相談もあります。
迷子の子どもが警察から連れてこられることもありますね。迷子とはいえ、おむつ一枚で子どもが外を歩いていて保護されるなど、ネグレクトのケースであることも多いのですが。
最近は子どもがスマホばかりいじってるからと、取り上げようとしたら子どもがキレて暴れるといった相談もよくあります。
あとは、障害のある子どもの相談や、非行相談にも対応しています。非行でやってきた子どもも虐待を受けていたと思われるケースが多いですね。
児童相談所全国共通ダイヤル「189」が広く認知されるようになって、今までは市区町村で対応していたような、子育てに関するちょっとした相談なども全部児相にくるようになったので、本当にいろんな相談がきます。
これらの子どもについての相談のほかに、里親になりたいという方の家庭調査や認定登録などの対応もしています。
「誘拐」と言われ、脅しの電話も…過酷な現場
――国は2022年度までに児童福祉司を2000人増やすと掲げていますが、実際に人は増えていますか。
人は増えていますが、虐待対応件数の増加にはまったく追いついていません。
新しく入ってくる若手も多いので、どうしても即戦力にはならない。なので、体感的に楽になったとは言えないですね……。
親御さんの立場になってみたら、子育てについて自分よりも若い人に指導されても、なかなか素直には聞けないですよね。
私が児相にきたときにはもう30歳を越えていましたが、それでも「何の苦労も知らないで育ってきた人にわからないでしょ」とか、「あまちゃんに」と言われていたぐらいなので……。
やっぱり児相の仕事は大変なので、自分の意思で異動してきたけれども、ほかの部署に異動したくなる人もたくさんいます。
地域の人たちからは早く保護してと言われ、保護した子を家庭復帰をさせようにも、家庭に返したら心配だと言われます。
一方で、親御さんからは子どもを返してほしいと言われるので、基本的に板挟みの状態です。
保育園や学校から職権保護で子どもを連れてくると、保護者から「拉致」「誘拐」と言われます。警察に訴えられたり、脅しの電話がかかってきたりもしますね。