日本経済はどんな病気にかかっているのか 政府の成長戦略は「やった振り」で終わる?

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この国の総人口と20~64歳人口は、ともに減少している。しかし、20~64歳人口のほうが減少のテンポがかなり速く、2010年代に入ると100万人規模で減少している。

人口100万というと、47都道府県で人口(2019年6月1日推計)の多いほうから37位の富山県で104万人、38位の秋田県で97万人であり、こうした人口規模に等しい20~64歳人口が、2012年から14年にかけて1年ごとに消えていた――ちなみに、46位の島根県は68万人、47位の鳥取県は56万人でしかない。

人口減少社会における経済パフォーマンス指標とは

2015年に大流行したピケティの『21世紀の資本』は、過去200年ほどを対象としていたためGDPの比較は1人当たりGDPで統一されている。人口に大きな変動がある社会で、総GDPを眺めてみても意味がないからである。

総人口が今大きく変化している日本の場合も、経済の健康診断を行うべき体温計は、人口変動を調整したGDPで測るのは自然である。そして先ほどの図を見ればわかるように、人口1人当たり実質GDPの伸びは、アメリカと比べても遜色がなく、生産年齢人口1人当たりではアメリカを凌いできた。

そうした事実が記された文章として、次のようなものがある。

人口減少社会が進む中でも、近年のわが国の1⼈当たり実質GDPの伸びは、他の先進諸国と比べて遜色がない。(「令和時代の財政再建に関する共通基本認識」自由民主党財政再建推進本部<2019年5月16日>)
日本の1 人当たりGDP の伸びは、他の先進諸国と比べて遜色のない伸びを示してきた。(「社会保障と国民経済――序章 医療政策会議における基本認識」日本医師会・医療政策会議報告書<2018年4月>)

「近年のわが国の1人当たり実質GDPの伸びは、他の先進諸国と比べて遜色がない」、のみならず、生産年齢人口1人当たりで見れば、ほかの国よりもがんばっているわけであるが、労働市場の様子はどうであろうか。

生産年齢人口の大幅な減少を受けて、今や、あの懐かしいバブル景気の時よりも、有効求人倍率は高くなっていて、労働市場は非常に逼迫している。さて、日本の経済の健康診断としては、どのような結果を出せばよいか。

人口調整をした経済のパフォーマンスは、ほかの先進諸国よりもよい。総GDPのパフォーマンスが他国よりも見劣りするのは、人口が大幅に減少しているのであるから当たり前で、そもそも人口減少社会の経済指標として総GDPを見るほうがおかしい。加えて、労働市場は、完全雇用に近い状態にあると考えられる。

この国では、長らく、デフレは悪で、これを脱却することが絶対正義であるかのように言われていたのであるが、日本の1人当たりGDPの伸びを眺めてみると、はたして、デフレ=不況というムードの中で日本の経済政策が考えられてきたのは正しかったのか?とも思えてしまう。

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