ぺイパルが描くモバイル決済の未来とは? ここまで進んでいるキャッシュレスな世界

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ペイパルはさらなる決済の進化を目指している。

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ペイパル本社に掲げられた「さよなら、お財布」の垂れ幕

彼らが掲げるスローガンは“アディオス・ウォレット(さよならお財布)”だ。サンノゼにあるペイパル本社で取材に応じたバイスプレジデントのアンジェラ・ソン氏は、そのためのペイパルの3つの柱として「インタークラウド上にウォレット(財布)を置くこと、モバイルとしての使いやすさ、開発者として将来を考える」という3点を上げた。

1点目の「インタークラウド上の財布」は、インターネット上のネットワーク(いわゆるクラウド)に自分の財布を持つという概念。クラウドを使えばさまざまなモバイル端末(携帯電話やタブレット)を通じてどこからでもアクセスして支払いをできる。 モバイル端末がなくても、店舗でデジタルコードを使って支払う方法など、さらに可能性を広げる計画もある。第2の「モバイルとしての使いやすさ」は、「モバイル・ファースト」という設計思想のことを指している。「モバイルでの使用を付随的なものや後付けと考えるのではなく第一に考え、小さい画面でも見やすく簡単に使えるデザインにしている」(ソン氏)。第3に「開発者としての将来を考える」。これはペイパル内部の開発者だけではなく外部の開発者にもペイパルのアプリが使いやすいよう技術革新をしていくことを指している。

例えば、スマホを使ったタクシー配車サービスで知られるUber(ウーバー)は2013年12月に立ち上げたSDK(ソフトウェア開発キット)を使って、ペイパル決済を組み込んでもらったという。クレジットカードの場合だと、カード番号やカード有効期限などをウーバーのアプリに入力しなければならず、煩雑でミスもおきやすい。

しかし、ペイパルを組み込めば、メールアドレスとパスワードの入力だけで支払いが可能。こうした取り組みを加速するために、2013年9月には、前述のウーバーやレストラン予約に使うオープンテーブル(Open Table)のようなアプリ決済のプラットフォームを提供するブレインツリー(Braintree)を買収した。

本社では実際にシステムを展示

ペイパル本社では、実店舗と同様のシミュレーションをできる場所が設けられていた。例えば、レストランに来客した時点でPOS(販売時点管理)と連携して、お客の来店回数や前回来店からの期間、注文志向などが出るシステムは、すでに全米300のレストランがテストケースとして採用しており、それがレストラン仕様のショーケースで見ることができる。

来店者側には、自分に合った割引やおすすめメニュー、テーブルの空き状況などが出る上、そのレストランの自分の注文による支払額をその場で把握し、サービスの度合いで決めたチップの金額まで総計できる。

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球場でもペイパルの決済ソリューションが活躍する

また、小売店のレジに並ばなくても自分のスマホをスキャンするだけでクーポン割引を使った支払いができるシステムも展示されていた。さらに、球場で試合を観戦中にスナックなどを買う場合、席を外さなくても座席に付いているQRコードを読んでから注文するだけで、手もとに商品を届けてくれるシステムなども展示されていた。

現実のソリューションとして、バリエーションが広がっている。日本でもこうしたサービスが使われる日が来るだろうか。

小野アムスデン道子
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