豊洲移転から1年「飲食店」から見る築地との差 それぞれの市場の飲食店を比較してみた
築地市場(東京都中央区)が2018年10月6日に、83年の歴史に幕を下ろし、同年10月11日に豊洲(江東区)へ移転し1年が経った。「日本の台所」として全国各地から採れたての旬な生鮮食品が集まり、世界最大の魚市場であった築地――。移転の賛否や取扱量の比較はすでにさまざまな記事がでているので、今回は築地の歴史を振り返るとともに、それぞれの市場の飲食店を分析した。
常連は食のプロ
「TSUKIJI」は世界でも名前が知れ渡るブランドであり、海外の高級鮨店では、築地からネタをわざわざ空輸しているというところも少なくなかった。
旧築地市場は大きく「場内」「場外」の2つのエリアに分かれていた。昨年豊洲へ移転した「場内」には、プロの料理人や業者が魚介や野菜を仕入れる「仲卸売り場」や早朝からここで働く人と仕入れを終えた人の食事やひと時の憩いの場、また産地の関係者が市場に来た際に打ち合わせや接待で利用していた「魚がし横丁」などがあった。
築地市場で働く人が食事などで立ち寄るお店はあまり変わらず、同じような服装で訪れる時間帯や座る席、さらにはメニューまでもがほぼ毎回、決まっている人が多かったようだ。お店の人も顔を覚えており、注文しなくても食事が出てくることもあった。場内にあった印度カレー「中栄」の店主に聞いたところ、2000人ほどの常連客の顔とメニューを覚えていたという。
「吉野家 築地1号店」(2018年に閉店)では、常連たちは入店するなり壁にある箸置きから箸を取り、席に着くなりカスタマイズされた牛皿とご飯が出てきたのを見たことがある。食のプロが通うので、常連は自分の好みでメニューに変化をつけるのだ。由緒ある築地1号店の吉野家の風景は、もう見ることができなくなった。
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