生活多様性保全へ企業がなすべきこと、自然は重要なステークホルダー
しかし、この締結国による「10年までに生物多様性の損失速度を顕著に減少させる」という目標の達成は極めて困難な状況にある。
この中、企業の役割が注目されつつある。08年2月には企業による国際的な組織「ビジネスと生物多様性イニシアチブ」が発足し、ドイツ企業に次いで多い9社の日本企業が署名している。
生物の多様性が失われれば、企業活動も成り立たない。たとえば、農業、食品、医薬品、観光などはその原資を生物多様性に頼っている。その一方で、農業、林業、食品、建設、電力などは生物多様性の損失に加担する可能性がある。
先進的な取り組みを行う企業もある。リコーは10年前から世界で森林生態系保全活動や啓発を行ってきた。今年3月には自社独自の「生物多様性方針」を策定、原材料調達など企業活動による影響を把握・分析し、継続的な負荷削減につなげるなどの施策を示している。
ところが多くの企業にとっては「何をしていいかわからない」「一企業にはどうしようもないこと」とピンとこないのが実態のようだ。地球温暖化対策も10年前なら同じような認識だったのかもしれない。
今年8月、政府が「生物多様性民間参画ガイドライン」を公表した。この中で企業に、(1)事業活動が生態系に及ぼす影響の把握、(2)負の影響の低減、(3)社内の推進体制の整備など具体的な取り組みを求めている。
しかし、最も大切なのは経営者の問題意識である。企業は株主、取引先、従業員、地域社会などさまざまなステークホルダーとの関係性の中で存在する。自然や生物も重要なステークホルダーであるという認識が持てるか。冒頭3例はすべて経営者の発想力から生まれたものだ。