生活多様性保全へ企業がなすべきこと、自然は重要なステークホルダー

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生活多様性保全へ企業がなすべきこと、自然は重要なステークホルダー

森に牛を放つ。すると牛は下草を食べ、倒木などをひづめでならして整地してくれる。さらに糞尿で栄養を与える。森の中で育った牛から出る牛乳は自然のおいしさがある。

森と牛と人が持続可能なつながりの中で共生する--。これを実践するのが、廃棄物再資源化事業を展開するアミタの「森林酪農」。現在、京都・京丹後市と栃木・那須町に「森林ノ牧場」を持つ。

日本は7割が森林で人工林も多いが、その多くが荒れている。このまま放置すると森林が生み出す恵みが減少するだけでなく、水害などを引き起こす。人間が手を入れることで森林を再生できないか。それも行政が行うのではなく、事業として。これがこのビジネスモデルの起点だ。

無価値といわれたものに多様な価値を見いだし、地域社会を再生する。その産物の一つが京都の百貨店ではいつも完売だという前述のアミタの「森林ノ牛乳」。「京丹後と那須では味がまったく違う。また夏と冬でも異なる。飲んだ人はそれに気づくことで、自然の恵みが多様であることを体感できるはず」(佐藤博之同社地域デザイン部長)という。

ニゴロブナは琵琶湖古来の珍味であるふなずしの材料として知られる固有種。ブラックバスなど外来魚の食害で絶滅が危惧される。地元の滋賀銀行では県水産振興協会に資金提供して養殖したニゴロブナ3万匹を2007年以降毎年放流している。

この放流のための資金は、同行が提供する環境対応型ローンを利用して太陽光発電システムを導入した顧客の、その利用による温室効果ガスの削減量に応じた排出権取引価格を算出し、その額を同行が拠出したものだ。

「貴重な生態系を有する琵琶湖を擁し、ひときわ環境意識が高い滋賀県民」(滋賀銀行)に根付いた事業といえる。

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