「中小企業を守る」目先の利益が日本を滅ぼす 「災害、人口減少、社会保障」大局的な政策を

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人口減少が進行する日本において、中小企業の規模を大きくするということは、合併や統合を意味します。

しかし経営者側からすると、面倒な生産性向上策を実行し、他人のために賃上げをするインセンティブはありません。

経営者を生産性向上に駆り立てる刺激もありません。日本はインフレも起きていませんし、ずっと超低金利が続いています。海外との激しい競争もありません。さらに、合併することは「社長の席」の数が減ることを意味します。経営者にとっては、現状維持が最も快適なのです。

もちろん、経営者の中には、賃上げのために生産性向上を目指す人もいるでしょう。しかし大部分は自分の目先の利益だけを考え、今の経済政策が変わるすべての提言に反対するでしょう。その気持ちは理解できます。

このように、人口減少のインプリケーションがわからないか、あるいは興味がない経営者の良心に期待できない以上、国が企業の規模を大きくせざるをえない方向に持っていくしかありません。その効果が大きく期待できる政策の1つが、「最低賃金の引き上げ」です。これにはさまざまな国のエビデンスがあります。経済史で学ぶ「賃上げインフレ」の再来です。

世界的に、外部からの刺激がないと中小企業の経営者は動かないというのは共通です。賃上げインフレは外部からのショックです。

倒産・廃業したいと思う経営者はいません。社長本人も失業するからです。だからこそ、最低賃金が上がったら、なんとかしようと頑張るのです。

つまり最低賃金の引き上げは、日本経済の低迷という「病気」の根治治療薬なのです。

「最低賃金引き上げ反対」は、自己中心的な主張だ

実はさらに大局的な視点に立っていただけば、最低賃金の引き上げに反対するということが、国益を損ねる極めて「自己中心的な主張」だということがわかります。「人口減少・高齢化の下で社会保障費をどう負担するか」というすべての日本人に関わる問題を、まったく無視しているからです。

社会保障負担総額を日本人全員の総労働時間で割ると、「日本人が1時間働くごとに、社会保障費をいくら負担しなければならないか」を算出できます。2018年の数字で計算すると、824円。もはや社会保障のために働いていると言ってもいいほど深刻な状況ですが、これは今後もっと悪化していきます。高齢者が減ることなく、生産年齢人口はどんどん減少していくからです。

私の試算では、2030年に1137円、2040年は1642円、2060年は2150円。給料を上げていかなければいけないのは明らかです。

もし給料を上げなかった場合、日本政府が取るべき道、そして日本の未来というのは、究極的には以下の3つしかありません。

1.税率を高めて、労働者をさらに貧困にさせる
2.社会保障を減らして、高齢者を貧困にさせる
3.両方しないで、国の借金をさらに増やして、国が貧困になる

給料を上げないというのは、日本の中の一部の「企業」や「経営者」を喜ばせるだけであって、日本国民全体にとっては百害あって一利なしの選択肢なのです。

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