六代目山口組ナンバー2の出所にくすぶる火種 「帰る場所がない」現実と分裂・抗争の激烈

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弘道会の台頭に焦燥感を募らせたのは、内部情報まで抜き取られていた警察も同じだった。

1992年に施行された暴力団対策法は、それまで合法的だった暴力団の興業や人材派遣、証券投資などを制限し、暴力団の経済活動を著しく狭めた。追い打ちをかけたのが2000年以降、各自治体が施行した暴力団排除条例だ。警察に「暴力団員」と認定されてしまえば銀行口座は凍結され、口座も開設できなくなった。住宅ローンは組めず、アパート・マンションへの入居も認められない。妻子まで「共生者」と見なされるため妻とは離婚し、週末に自宅を「訪問」するような生活を送る若い組員もいる。

「弘道会壊滅作戦」(2009年)を指示した安藤隆春警察庁長官(当時)は「弘道会こそ山口組の強大化を支える原動力」「弘道会の弱体化なくして山口組の弱体化はなく、山口組の弱体化なくして暴力団の弱体化はない」と暴力団壊滅の一丁目一番地に弘道会撲滅を掲げた。念頭にあったのが司氏であり、高山氏だった。

暴力団壊滅の序曲

事務所の使用制限仮命令は今月27日まで。その後、改正暴力団対策法(2012年施行)に基づき「特定抗争指定暴力団」に指定されれば3年間、事務所は使用できず、5人以上で集まることも認められなくなる。組織の維持運営は不可能になるだろう。

司・高山コンビが築き上げた六代目山口組はどうなるのか。なお、名古屋市の郊外には、司氏が組長を退いた後に住む家用の土地約3000坪が確保されているという情報もある。組長の座を高山氏に禅譲するスキームがすでに出来上がっているということだろうか。

注目が集まるのが高山氏の今後の判断だ。このまま抗争を続けるのか、それとも警察の締め付けをかわすための和解を模索するのか。裏切りは許さない男と言われるが、“裏切った”とみる神戸山口組への報復を続ければ、警察による解散命令を招くだろう。実力者は出所したが、同時に、暴力団壊滅の序曲が流れ始めている。

野中 大樹 東洋経済 記者

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のなか だいき / Daiki Nonaka

熊本県生まれ。週刊誌記者を経て2018年に東洋経済新報社入社。週刊東洋経済編集部。

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