開始10年「裁判員制度」から見えてきた"光と影"

3分の2の人が裁判員を辞退する理由

調書中心で判例をなぞるだけの“お決まり”判決ではなく、法廷で被告人に質疑応答する形式を持ち込んだ成果だ。

容疑者の取り調べを録音や録画する“可視化”が進んだこと、また裁判後に検事と弁護人、判事の三者で“反省会”を行うようになったのも導入以降。反省会では冒頭陳述や立証の仕方、主張がわかりやすかったかなど、次の裁判をよりよいものにすべく振り返る。裁判員にわかりやすい裁判は、すなわち国民にわかりやすい裁判でもある。

そして、もうひとつの大きな課題、辞退率はこう見る。

「何かイベントをやってドッと辞退率を下げる、というものではないですから。私たちができることは、みなさんが裁判員となったとき、しっかりとした裁判をしてもらえるよう、その負担を極力小さくする。そういう努力、工夫、準備をしていくということ。そのうえで、やはり経験者の方に、感想を率直に語ってもらうということが大切だと思います」(小森田判事)

経験者への調査では「やってよかった」という声が96%にものぼる。「何がよかったか」が伝わるには、前出・瀬木教授、四宮教授も指摘するとおり、守秘義務の運用は考える必要があるだろう。

「現状、裁判についてしゃべることは原則禁止で“個人の感想だったり、公判の様子を話すことだけはOKですよ”となっています。そうではなくて、“話すことは原則OK”とするべき。“OKだけど、各自の意見、多数決の数、個人情報などだけはダメですよ”という方向にする。評議の中身もみんなで合意した事柄だけに限定する。これだけで、もっと多くの参加者が、安心して自分の経験を伝えられるはずです」(四宮教授)

まだまだ制度が浸透していない

司法試験合格前に、裁判員を務めた経験を持つ花田弘介弁護士も、解決策は「正しい知識の浸透」だと言う。

「個別具体的な課題や問題の議論も重要ですが、“もっと前の段階”を考えるほうが先だと思います」

そもそも制度自体が国民に浸透していない現実だ。

「そこが、すべての問題の根っこです。ネガティブな情報は取り上げられがち。どうしてもそこに目や耳が向いてしまう。すると裁判員イコール“長い”“難しい”というネガティブな連想をされてしまいますから」(花田弁護士)

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