開始10年「裁判員制度」から見えてきた"光と影" 3分の2の人が裁判員を辞退する理由

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だが、運用現場では苦労や戸惑いも。開始当初から関わった、東京地方裁判所の小森田恵樹判事が当時を振り返る。

裁判員は裁判で何するの?(図:週刊女性PRIME)

裁判官のことを“わかってくれるのか?”とか、逆に“裁判や司法に初めて触れる方々をうまく接遇することができるか?”という不安はありました。準備は文字どおり手探りで“何人の候補者に集まってもらえばいい?”とか“候補者への質問の仕方は?”から、ですよ。

裁判官が上から目線で裁判員に発言したりするわけにはいきませんから。そもそも接遇とは、“何を、どのくらいする必要があるのか?”ということも、皆目わかりませんから(苦笑)。書記官や事務官も一緒に検討をしましたね」

同じく東京地方裁判所の村田千香子判事の裁判員裁判は、施行から約5年後。

「それでも実際やるまでは“どういう方が来るんだろう?”“どう進んでいくんだろう?”と」

言葉1つとっても、裁判で普通に使われる用語は一般的ではなかったり、意味合いが異なる場合もある。例えば“殺意”は、

「一般的には“殺してやろう”という、積極性まで含むようなイメージで理解されていると思うのですが、法律的には“死んでもかまわない……と思っていた”のように積極的に“殺してやろう”までいかなくても殺意だったり。そうした言葉ひとつまで“裁判員の方々にわかりやすい表現は?”と、改めて考える必要がありました」(村田判事)

裁判員制度で「ココがよくなった」

一方で裁判員の資質には不安はなかったそう。

「実際に始まってみると、裁判員の方々は非常にまじめな方が多かったですね。私自身、もともと、“日本人は一生懸命に裁判員をやってくださる方が多いんじゃないかな”というイメージは持っていましたが。

というのも、わざわざ裁判所まで候補者として来て、選ばれたら何日間も続けて審理に立ち会って、他人の刑を決めるという作業は決して楽ではありませんからね。そんな大変なことに、自分の大切な時間を割こうとしてくださる方々なんですから」(小森田判事)

評議が紛糾したり、量刑が極端に重くなるようなケースも、「記憶にない」そう。

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