日本の外交戦略を斬る~国際刑事裁判所加盟が意味すること~

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日本はお金だけでなく、人を送り込むべき

 前述のように、わが国は、ICC準備会合の議長国までやり、周りからは「ICCに一番に賛成するのが日本だ」といわれていたようです。ただ、アメリカが入ろうとしなかったら、一転して「慎重姿勢」。私が会った海外の方々は、明確には言いませんが、「わが国がアメリカを盲目に追従していることへの違和感」を感じているようです。

 ちなみにアメリカは、京都議定書(地球温暖化への対応)、CTBT(核実験禁止)などから脱退しています。アメリカと国際枠組みをどうつないでいくか。ここにわが国の存在価値があるのではないでしょうか?(そう言うと、「アメリカが日本の言うことを聞くのか?」という人がいますが、日本にとって、「軍事力増強」よりまず国際社会で理念を持って発言していくことの方が重要だと思います) 日本は、ICC最大の資金拠出国になります。しかしながら、判事などをわが国から出せなければ発言力が高まりません。2009年に6人の判事の改選がありますが、そこで絶対わが国から判事を送り込むべきです。ちなみに、韓国は18人の判事のうち1人をすでに出しています。

 国連の2割の分担金を出しながら、なにも役職が取れない日本。一方、韓国は国連事務総長を輩出し、ICCの判事ポストも採っています。国際機関における人材の派遣は日本にとって大きな外交上の課題です。すでに日本は、WHO事務局長の選出においても日本人を送り込むことに失敗しました。もうこれ以上の失敗は許されません。

藤末健三(ふじすえ・けんぞう)
早稲田大学環境総合研究センター客員教授。清華大学(北京)客員教授。参議院議員。1964年生まれ。86年東京工業大学を卒業後、通商産業省(現経済産業省)入省、環境基本法案の検討や産業競争力会議の事務局を担当する。94年にはマサチューセッツ工科大、ハーバード大から修士号取得。99年に霞ヶ関を飛び出し、東京大学講師に。東京大学助教授を経て現職。学術博士。プロボクサーライセンスをもつ2女1男の父。著書に『挑戦!20代起業の必勝ルール 』(河出書房新社)など。個人ブログ にて毎日情報発信中

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