日本の外交戦略を斬る~国際刑事裁判所加盟が意味すること~

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ICCに背を向けるアメリカ

 ICCには、もう一つ大切な機能があります。それは各国の刑事裁判権の補完を行うということです。ICCは、各国の刑事裁判権が正常に機能しない場合に限り、その権限を行使します。実際に、現在も、ウガンダ、コンゴ、スーダン(ダルフール地方)、中央アフリカ共和国の各事態について捜査が進められています。(神戸大学の土佐弘之教授は、「北から南への一方向的な干渉」という側面があることを指摘しています。つまり、先進国が途上国を裁くことになるのではないかとの指摘です。ちなみにイラク紛争を起こしたブッシュ大統領こそICCで裁かれるべきという人もいます。)

 ICCへの加盟国は、2006年11月末時点で102カ国となっています。しかし、アメリカ合衆国をはじめとして、ロシア、中国といった主要国は未加盟で、アジアや中近東からの加盟国も12カ国にとどまっています。

 アメリカは、クリントン大統領在任時の2000年に署名しましたが、02年にブッシュ大統領が、「外国に派遣したアメリカ兵士が政治的な理由で裁かれるおそれがある」として署名を撤回しています。先日の中間選挙の結果、民主党が議会の主導権を握ることによって、変化が生じることを期待したいですが、昨年、私がアメリカ軍の将校と話をした感じですと、現場が相当反発しており、ブッシュ政権での方向転換は難しいのではないかと思います。ちなみに、アメリカは、さまざまな国との間で、アメリカ兵をICCへの訴追から免責する二国間協定の締結の交渉を行っています。

当初は日本も頑張っていた

 わが国は、規程の作成に大きな役割を果たしています。規定作成の段階では、会議の議長国までやっており、国際的には、ICCの署名は、日本が一番になるのではないかと見られていたそうです。

 ところが、アメリカのICCへの対応の変化もあり、日本のICCへの態度はあいまいとなってしまったようです(公式な見解ではありません。私が聞いた範囲の話です)。

 加盟は決めましたが、これからICCに否定的なアメリカとの調整が大きな課題となるでしょう。また、日本による分担金の分担率は加盟国最大となりますが、「お金だけ出して、人を出せない」というパターンに陥る可能性は大きいと見ています。人が出せなければ、発言力も持つことができませんので、その点を解決していかなければなりません。我々の税金を20億円も拠出するのですから。

 地道な運動なので新聞などには全く載りませんが、今回の日本のICC加盟には、自民党の高村正彦氏(衆)、柴山昌彦氏(衆)や公明党の遠山清彦氏(参)、そして民主党の同僚である犬塚直史氏(参)、江田五月氏(参)、若林秀樹氏(参)など多くの方々の活動が裏にあります。

 各党がICC加盟推進の議員連盟を作り、また、PGAジャパン(Parliamentarians for Global Action:地球規模問題に取り組む国際議員連盟)においてもICCを取り上げ議論が続けられていました。

 私は、今回のICC加盟への政治動きを見ていて、外交問題における政治活動のあり方を見たように感じます。超党派で、政治家が国際的に議員間でつながり、新しい国際枠組みへの参加の機運を作っていく動きができたことは大変意義深いことだと思います。

 私は、「国連の改革」をわが国の政治家から提案し、そして国際的に根回しをしていくべきだと思っています。今、国会内で議論していても「国連は機能しない」「国連の常任理事国になれなかったのが外交の失敗」だという議員は数多くいます。しかしながら、私は、国連を機能させるのは日本であり、また、外交は政治家が中心に行うものでなければならない、と考えています(私にそれだけの力があるかは別ですが、やる気だけはあります)。

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