ペイパルのリブラ計画脱退は何を意味するのか 初のメンバー脱落、デジタル人民元を優先か

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ペイパルを皮切りにリブラからの脱退は増えるのか(写真:ロイター/Thomas White)

先週4日にアメリカ決済サービス大手企業のペイパル(PayPal)はフェイスブックが発行を計画する暗号資産「リブラ(Libra)」の運営組織であるリブラ協会から脱退することを正式に発表した。メンバーの公式脱退表明は初めての出来事である。

リブラとそのほかの暗号資産の違いは法定通貨による裏付けがあることやそれがもたらす価格安定性だとよく指摘される。この点は過去の東洋経済オンラインでも議論した(『中央銀行はなぜこうもリブラを攻撃するのか』)。だが、計画の初期段階からペイパルを筆頭とする超が付くほどの大手企業(計28社)がリブラ協会に名を連ねていたことも、リブラ計画が特別であることを示す事実として語られてきた。

ペイパルの脱退により協会メンバーは27社に減少するが、今年6月に発表された白書では、リブラ発行を企図する2020年前半までに約100社がメンバーになるとの計画が打ち出されていた。来週14日にはジュネーブのリブラ協会本部に創設メンバーが集まり、いよいよ、ここで運営を切り盛りする正式メンバーが決定されるといわれている。したがって、この日程前後でリブラ計画参加の可否について意思表明をする動きが活発化するかもしれない。

フェイスブックよりも中国、なのか

初の脱退を表明したペイパルの思惑は定かではない。だが、10月1日、同社が外資系企業としては初めて中国でオンライン決済サービスの認可を取得したことが報じられており、その直後の脱退表明であるだけにさまざまな観測を呼んでいる。

リブラの対抗馬として頻繁に名の挙げられるデジタル人民元プロジェクトにおいて、同社をプラットフォーム構築の一員とする方向で、検討が進んでいるとの観測もある。邪推を承知で言えば、「稼動の見通しが立たないリブラ(フェイスブック)と一緒に世界市場を狙うより、稼動が確実なデジタル人民元と一緒に中国市場を狙った方が賢明」という経営判断があっても不思議ではない。

ちなみにペイパルに加え、ビザやマスターカードといったクレジットカード大手企業も距離を取り始めていることが報じられている。7月にはビザCEOのアルフレッド・F・ケリー氏がリブラ協会への参画を公式決定している企業は1社もないことを明らかにして話題となった。

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