ペイパルのリブラ計画脱退は何を意味するのか 初のメンバー脱落、デジタル人民元を優先か

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規制当局の標的になっているフェイスブックのザッカーバーグ氏(写真: REUTERS/Joshua Roberts)

規制に阻まれ、当初描いた理想は実現できない

日本経済新聞(9月12日付)のインタビューで浅川雅嗣・元財務官が「規制とリブラの関係を具体的に考えていくと、リブラの長所は消えかねない。リブラも決済手段であるからマネーロンダリング(資金洗浄)を防ぐ国際ルールに従う必要があるだろうが、一定の送金には厳しい本人確認が求められる。そうなれば、世界中の誰でも手軽に低コストで送金できるようになる、というリブラの長所と逆行してしまう」と述べていたことは非常に示唆に富む。

規制当局の納得がいく仕様で稼動に至ったとしても、もはや当初理想としていた姿とはだいぶ異なるものになる可能性が高い。ペイパルの脱退表明はこうした悲観的な見通しが作用した結果ではないのか。いずれにせよ、10月中にはリブラ協会のメンバーが正式決定されるという中で、今回のペイパルの動きが「蟻の一穴」となりそのまま瓦解に向かうのか、それとも再びリブラを支持する企業が次々と現れるのか、リブラ計画は瀬戸際に来ている。

※本記事は筆者の個人的見解であり、所属組織とは無関係です。

唐鎌 大輔 みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト

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からかま・だいすけ / Daisuke Karakama

2004年慶応義塾大学卒業後、日本貿易振興機構(JETRO)入構。日本経済研究センターを経て欧州委員会経済金融総局(ベルギー)に出向し、「EU経済見通し」の作成やユーロ導入10周年記念論文の執筆などに携わった。2008年10月から、みずほコーポレート銀行(現・みずほ銀行)で為替市場を中心とする経済・金融分析を担当。著書に『欧州リスク―日本化・円化・日銀化』(2014年、東洋経済新報社)、『ECB 欧州中央銀行:組織、戦略から銀行監督まで』(2017年、東洋経済新報社)。

※東洋経済オンラインのコラムはあくまでも筆者の見解であり、所属組織とは無関係です。

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