日本人のノーベル賞が「急減する」絶対的理由 日本は5年に1人、中国は受賞ラッシュに!?
各国の科学技術力を比較する指標には、論文数、高被引用論文数(他の研究者の論文に引用される頻度の高い論文の数)、世界大学ランキングなどがあります。そのいずれもが、日本の科学技術力の低下を示しています。
まず、大学ランキングを見てみましょう。世界ではさまざまな機関が独自の基準で評価し、大学ランキングを公表しています。
最も有名なのは英国教育専門誌『Times Higher Education(THE)』の「世界大学ランキング」ですが、2016年に評価基準を変更し推移が理解しにくいため、上海交通大学の「世界大学学術ランキング」(上海ランキング)を例に見てみます。
上海ランキングに限らず各機関の大学ランキングでは、毎年トップ10は米英の大学がほぼ独占しています。評価の基準はさまざまですが、どのランキングも論文数や被引用論文数を重視しているため、論文数が圧倒的に多い米英の大学が有利だからです。
注目すべきは上位にランクされた日本の大学の、順位の推移です。表に上海ランキングでの日本のランキング上位大学の順位の推移を示しました。今世紀に入り、日本の大学が徐々にランキングを落としていることがわかります。
上海ランキングの評価基準は研究力のみです。具体的には、ノーベル賞やフィールズ賞を受賞した卒業生や教員(研究者)の数、被引用論文の多い研究者の数、『Nature』誌と『Science』誌に発表された論文数などが指標です。
つまり、上海ランキングで順位が下がっていることは、大学の研究力が劣化していることを示しています。
主要国で唯一、論文数が減少
次に論文数です。世界の自然科学系論文数の推移のデータを見ると、全世界の論文数は増加し続けています。1981年の約40万件から2015年には約140万件に増えました。3.5倍です。
日本を除く主要国も論文数を増やし続けています。ここでいう主要国とは研究開発費総額上位のアメリカ、中国、日本、ドイツ、韓国、フランス、イギリスの7カ国のことです。
そのような趨勢の中で、唯一日本だけが近年、論文数を減らしています。1990年代後半に横ばいの時代を迎え、2000年代に入ると論文数世界2位の座から陥落、2013年以降は論文数が減少し始めています。
かつてアメリカに次ぐ論文数を誇った日本の現在の位置は、アメリカ、中国、イギリス、ドイツに次ぐ5位です。
論文数は研究者の実績となるため、よいポストを得るためにとにかく論文の数を稼ごうとする研究者は少なくありません。が、粗製乱造ではいくら数が多くても意味はありません。反対に言うと、全体の数は少なくなっても、優れた論文の数が増えていたり維持されていたりするのであればそれほど大きな問題ではないともいえます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら