どぶろっくの「歌ネタ」圧倒的に笑える仕掛け 「大胆な下ネタ」「繊細な構成」が常識を覆した

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彼らは同じような設定のネタを2本並べる作戦に出た。だが、後半の展開にはそれぞれ違いがある。2本目のコントのオチは、全体の集大成のような意味合いがある。一つひとつを独立したネタとして楽しむこともできるし、ひと続きの連作として味わうこともできるようになっている。どぶろっくのネタは単に面白いだけではなく、そういう意味でも周到に計算され作り込まれたものだった。

「準決勝と決勝の会場の温度差」はどのお笑いコンテストにも共通して存在するものだが、「キングオブコント」ではそれがより強く感じられる。なぜなら、コントは漫才と違って、演じる側がその場の空気に合わせて調整できる余地が少ないからだ。

実力は間違いなく「本物」

漫才は2人の会話から成っている。会場の雰囲気や観客の反応を見て、間合いや声の出し方をその場である程度は調整することができる。これによって、準決勝と決勝の空気の違いに対応することができるのだ。

一方、コントはより作品性が強い。セットや衣装や小道具があらかじめ準備されていて、決まった台詞を決まった順番で言うことしかできない。たとえ途中で芸人が「このネタは場の空気に合っていない」と感じたとしても、どうすることもできないのである。

その点、歌ネタは歌や音楽の力を借りてある程度の盛り上がりを作ることができるので、場の空気の影響を受けにくい。どぶろっくが決勝に行った場合、ほかの芸人が彼らを倒すのは難しいだろうと私が思っていたのはそのためだ。

どぶろっくは大胆な下ネタと繊細なネタ作りによって、「歌ネタは優勝できない」という定説を覆して優勝を果たした。下ネタに苦手意識を持っている人は多いかもしれないが、激戦を制した彼らの実力は紛れもなく本物だ。

ラリー遠田 作家・ライター、お笑い評論家

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らりーとおだ / Larry Tooda

主にお笑いに関する評論、執筆、インタビュー取材、コメント提供、講演、イベント企画・出演などを手がける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)など著書多数。

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