課題山積の日本でシンクタンクが育たない原因 求められるのは霞が関に頼らない政策起業家

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しかし、行政は住宅再建までは支援しても、それで終わりです。過去の例に学ぶと、住宅再建の後はニーズが変わるのは明白でしたから、私たちNPOはそのニーズを明らかにしようと、1年目からアンケートなどを実施し、それを行政などに発信し、理解していただこうと努めていました。これをわれわれは「社会化」と言っています。社会の問題についてデータを示して、行政などに認識していただく取り組みです。

ただ、それだけでは行政は動きません。私も最初に岩手県庁に行きましたが、「コミュニティーなんてものは、行政の仕事ではありません」とはっきりと言われました。

ですので、次にわれわれは実例作りに取り組みました。具体的には、企業の支援を受けて、釜石市でコミュニティー再建に取り組んだのです。成功例があると、行政は関心を示します。釜石でうまくいったため、福島県の双葉町や大熊町でもコミュニティー支援を実行することができました。

支援事業を広げるため、制度化する

ただ、点の支援は広がりに限界があります。小泉(進次郎)さんに基調講演でご指摘いただきましたが、制度化しなければ、支援は面となって広がっていきません。そこで、われわれは復興庁と福島県に働きかけ、コミュニティー支援を制度化するよう提案しました。福島県には、われわれの事業をご理解いただき、予算がついて制度化することができました。最初は門前払いだった岩手県でも、枠組み作りが進んでいます。

まとめると、まず、調査によりニーズを把握し、それを発信し「社会化」する。支援策を「事業化」しモデルケースを作る。それを基に、支援事業の「制度化」を試みる――。このような順序で支援事業は広げていくことができます。

日本の場合、NPOはこれまで社会化と事業化までは活発に取り組んできましたが、制度化の部分は弱いと感じていました。そういう中で、船橋先生から「政策起業」というコンセプトをご提示いただき、まさにそこだと思いました。制度化は、まさに政策であり、われわれNPOも社会起業家としてだけでなく、政策起業家としても活動していかなければならないと思っています。

船橋:社会起業家として、社会問題の社会化と解決策の事業化という活動をされてきた藤沢さんが、制度化の必要性を強く感じられた理由を具体的に教えてください。

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