ガス室で命を絶たれる「元飼い犬」たちの叫び

愛犬の殺処分を選択する飼い主たちの言い分

(写真)『老犬たちの涙 “いのち”と“こころ”を守る14の方法』より

収容房の近くを誰かが通るたび、施設じゅうに響きわたるほど大きな声で鳴き続けていたこの子は、12歳のラブラドール・レトリバー。

「独り暮らしをしていた高齢の飼い主さんは重度の認知症で、犬の世話ができる状態ではなく、緊急入院。散乱した部屋に残されていたこの子もガリガリに痩せ、自力では立ち上がれないほど衰弱していました……」

収容房の柵に皮がすりむけるほど顔をこすりつけ、大きな体を左右に揺らし、足を踏み鳴らしながら、悲痛な声で訴えます。

おかあさん……どこにいるの?

ぼくはここにいるよ!

「少子高齢化が進む日本で、人間と犬の“老老介護”問題はますます深まっていくと思います。このままだと、これからも、収容される老犬は増え続けるんじゃないでしょうか。独居で、近所付き合いもほとんどない高齢者が、孤独やさびしさを紛らわすため、安易に犬を飼い始めてしまうケースも多いように感じます……。高齢の人には、自分に何かあったとき、犬だけが取り残されるリスクがないのかを、飼う前によく考えてほしい」と職員さん。

東北地方のある自治体の行政施設と連携しながら活動されている動物愛護団体のスタッフさんにお話を伺いました。

家族中で孤立してしまう高齢者も…

「昔は大家族で犬を飼っていたので、高齢者が亡くなるようなことがあっても、残された家族で、その後の世話が可能だったんだと思いますが、うちの県の場合、若い人は地元を離れ、残された親は独り暮らし。施設に入ったり、入院の際には犬猫を手放すケースが多くなっていると思います。

また、大家族で暮らしていても、家族の中で孤立しているお年寄りもおられます。私が相談の電話を受けたのですが、もう何年も前から体調が悪く、入院しなければならなくなり、家にももう戻れないとのこと。心の支えだった犬がいて、その子のために入院をしないできた。でも、もう限界で、犬を手放したい。家族がいるけれど、手放したい。なぜなら、家族のところに置いていくと、殺処分よりひどい目に遭わされるのが目に見えているから……。自分は自分の責任で、この子を保健所に連れていきます……と泣いておられました。

また、親が独り暮らしで寂しいだろうからと、子どもが親に犬を買い与え、結局、親は世話ができずに手放したというケースもありました。そんなふうに、お年寄りが飼いきれなくなった犬が次から次へと行政施設へ持ち込まれ、殺処分されるのを目の当たりにしていますから、私たちの会では、60歳を超えた高齢の方には、子犬を譲りません。最後まで面倒をみられる老犬を家族に迎えていただきたいとも伝えます。

でも、そうお伝えしても、中には、『あー! 年寄りにはもう犬は飼うなと言うんだな!』『自分は今は健康で何の問題もないのに、譲渡してくれない!』と、激怒する方もおられます……」

次ページ「手のかかる老犬の世話を押し付けられて迷惑だ」
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