トランプ政権の対中国政策が「劇変」している? 米中関係を楽観視する市場への強い違和感
おそらく軽視する理由としては、「まだアメリカ政府は検討を始めたばかりであり、実施されるかどうかわからない」「中国企業への投資や、アメリカに上場している中国企業の株価上昇で収益を得ている証券界が、強く反対するだろう」「トランプ政権は本気でそうした規制をする気はなく、対中通商交渉で中国側の譲歩を引き出すための単なる脅しに過ぎない」といったところだろう。
もちろん、そうした見解を、全否定することは難しい。しかしこの報道を受けて、多くの人が持つ印象は、強い違和感ではないだろうか。というのは、これまでのトランプ政権の対中強硬姿勢は、主として貿易問題と安全保障面に限られていたからだ。関税の引き上げや構造問題改善の要求は、貿易不均衡の縮小や国際競争力上の(アメリカから見た)不公正なハンディの解消、という分野からのものだった。ファーウェイ社に対するアメリカ企業からの輸出規制は、中国製の通信機器により、米政府を含めた通信のやり取りが傍受されているのではないかといった、安全保障面での懸念に基づく政策であったと解釈できる。
これに対して、今回報じられた中国への証券投資規制は、通商問題ではないし、安全保障の観点からのものでもない。では何かと言えば、「中国つぶし」のように見受けられる。筆者は、これまでの米政府・議会の議論の流れが背後で変わっているのではないか、と推察しており、その背景要因には仮説を持っている。
ただ、本稿執筆時で裏取りできていないので、その仮説はここでは述べないが、米政府の路線の主軸が、交渉でアメリカにとって有利な事態を得る、ということから、(全面的でないとしても)中国つぶしにシフトしているのであれば、中国がつぶれるまでアメリカの強硬姿勢は継続されることになる。それが正しければ、米中関係についての楽観論は、さらに危険だということになる。
米ドル高に対する不満が、いずれ爆発する?
もう一つ気になるのは、ドナルド・トランプ大統領が米ドル相場の水準に対する不満を、突然爆発させないか、という点だ。
トランプ大統領がジェローム・パウエル連銀議長に対する批判を行なうのは、日常茶飯事のようになっている。利下げが遅い、不十分だ、という非難だが、その文脈としては、利下げが遅いと景気が良くならない、という論理展開で述べたことはあったことはあったが、主には、米ドル相場と絡めたものだ。
特にECB(欧州中央銀行)が追加緩和を進めていることと比べ、米連銀の動きが遅いことが、米ドル高・ユーロ安を引き起こしている、という形で批判している場合が多いように思う。
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