危機のJDI、見えぬ「スポンサー探し」の終着点 総会前日の出資者離脱でも資金繰りは万全か

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2014年にJDIが上場した際に同社株を購入した株主からは悲痛な声が複数上がった。ある株主は、「証券会社に勧められて、何万株も(JDI株を)持たされた。だまされたほうがバカだが、何千万も損をしている株主がいることをわかってください。(JDIの経営陣は)皆、他人事に思っている」と怒りをぶちまけた。

「経営陣は100%報酬をカットすべき」との指摘も集中し、会場から拍手がわき上がる場面もあった

株主の質問に対し、菊岡氏は「私も2年前からJDIに入ったが、これからは自分の人間関係も生かしながら、外部の人を迎え入れていきたい。INCJから大きな支援を受けつつも、自助努力をしていきたい」と答えた。

今期の黒字転換は本当に可能なのか

総会では珍妙なやりとりもあった。INCJの再建を道半ばにして、2019年3月末に病気療養で退任した東入来信博・会長兼CEOについての質問に、月﨑氏は「現在は病も回復し、ご自宅で悠々自適の生活を送っている」と明かし、会場の失笑を買っていた。

結局、会社側の提案した4本の議案はすべて可決された。総会に来場した60代の男性株主は、「自分が何に賛成・反対すればよいのかよくわからず、キツネにつままれたような気持ち。今は、1円でも損切りしたいと祈るばかり」と吐露。別の男性株主も「経営陣が飄々としているのが気になる。経産省が潰さないと内心わかっているからなのかな」とあきれる。

JDIは、6月末時点で工場の減損損失や早期退職に関する費用により772億円の債務超過に陥っている。2019年3月期まで5期連続の最終赤字だが、足元では「新製品(アップルの新型スマホ「iPhone11」向けパネル)の投入により、計画比プラスで推移している。有機ELの新製品や指紋認証用センサーの出荷も控える。黒字転換は可能」(月﨑氏)と強気だ。しかし、これまで何度も下方修正してきた「実績」がある以上、月﨑氏の言葉通りに捉えることは難しい。

JDI株の27日の終値は60円。国策の名の下にここまで延命してしまった企業の行く末に責任を誰が持つのか。異例の株主総会がその実態を浮き彫りにしてしまった。

印南 志帆 東洋経済 記者

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いんなみ しほ / Shiho Innami

早稲田大学大学院卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界の担当記者、東洋経済オンライン編集部、電機、ゲーム業界担当記者などを経て、現在は『週刊東洋経済』や東洋経済オンラインの編集を担当。過去に手がけた特集に「会社とジェンダー」「ソニー 掛け算の経営」「EV産業革命」などがある。保育・介護業界の担当記者。大学時代に日本古代史を研究していたことから歴史は大好物。1児の親。

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