小学生の学びに見えた承認欲求との付き合い方 果てのない山登りのようだが成長の糧にもなる

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例えば、承認欲求が「前よりも満たされる」ってことはあるでしょう。

だけどその短い充足の瞬間が、ずっと維持する、一生続くということはイメージしづらいですよね。

そう考えると、承認欲求を満たす道のりは山登りと似ています。目指している山を登りきったとき、人はなにを思うでしょうか。「やったー!」という達成感と、すばらしい景色に、心は満たされる。だけど、頂上から見渡してみると、あれっ?

なんだかもっと高い山が、目に入ってきます。次は、そっちを登りたくなる。登るまでは見えなかったけれど、高い山を苦労して登った結果、視界が開けてより高いところが見えてくるのです。

さらに高い山を登れば、もっともっと苦労する。その分、満たされる充足感は、いまよりもっと高まるのではないか? だったら、さらに高い山を登ってやろう!

……なんだか、そういうことのくり返しのような気がします。

高いところへ、より高いところへ。山登りには果てがありません。

「ちょっと満たす」のくり返し

山を登った達成感はたぶん、長く定着するわけではなくて、次の山への憧れを生みます。だから、100%の達成感の定着を求めて山を登るのは、ちょっと無茶な話かもしれません。でも、そういうボクたちだからこそ「成長」ができる。承認欲求って、付き合い方を間違えなければ案外そんな、ポジティブな仕組みにもなっているのかもしれない。

「満たされ100%!」 を最終目的とするのはオススメできませんが(満たしきれないので)、「ちょっと満たす」のくり返しは、結果的に大きな成果をもたらすでしょう。

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仮説として、みてみて欲が80%くらい満足した状態が、「満たされた」のMAXなのかもしれません。

20%足りない程度なら、まぁ納得もできる、という割合ではないでしょうか。

だからといって、「8割を目指して努力する」というのも、なんだか弱気な感じがしますよね?

100%を「理想像」として、努力し続けることは、間違いではありません。だけど、どうしても現実的に「満たし『きれない』」分を、どのように捉えるか。ここが、前向きに山登りができるかどうかの分かれ目です。

「みてみて欲は満たされない。でも、みてみて欲の満足を求めて努力することは成長のカギ」。これが、ひとまずの結論であり、ボクなりの前提です。

沼田 晶弘 国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭

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ぬまた あきひろ / Akihiro Numata

1975年東京生まれ。東京学芸大学教育学部卒業後、アメリカ・インディアナ州立ボールステイト大学大学院で学び、インディアナ州マンシー市名誉市民賞を受賞。 スポーツ経営学の修士を修了後、同大学職員などを経て、2006年から東京学芸大学附属世田谷小学校へ。児童の自主性・自立性を引き出す、斬新でユニークな授業はアクティブ・ラーニングの先駆けといわれ、数多くのテレビや新聞、雑誌などに取り上げられている。教育関係のイベントはもちろんのこと、企業からの講演依頼も精力的に行っている。著書多数。学校図書生活科教科書著者。ハハトコのグリーンパワー教室講師。Twitter:ぬまっち(沼田 晶弘)@小学校教諭/@88834

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