小学生の学びに見えた承認欲求との付き合い方 果てのない山登りのようだが成長の糧にもなる

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制限時間は2分。クラスで一斉に始めて、答え合わせも子どもたち同士に任せます。すべて正解したうえで、解き終わるまでに2分を切った子には、「U2」(Under 2minutes)という称号が与えられます。「U2」の子は、その年の年賀状に、自分がU2の資格保持者であると、書いていいのです。

これには、子どもたちのテンションがめちゃくちゃ上がりました。

クラス全員がだいたい「U2」になると、チャレンジを「RU2」(Random Under 2minutes)というものに進化させることにしました。

タテヨコ1列目に1から9までを順番に並べるノーマルなフォーマットに対して、数字をランダムに配置した81ます計算のチャレンジが、「RU2」です。

難易度は大幅にアップ。でも子どもたちは、新たなチャレンジに、さらにやる気を出します。ふつうは嫌われがちな九九ですが、「U2」を取り入れたことで子どもたちは家に帰ってもずーっと九九に熱中して、保護者を驚かせたそうです。

満たされるても長くは続かない

この「U2」チャレンジをクリアする意欲も、根底にはみてみて欲があるからでしょう。 2分以内に解答を成功させることで、「U2」とクラスのみんなから呼んでもらえるという承認が、その子にとってはものすごく大切な報酬になる。

……しかし、実はその満足感も長くは続きません。

「U2」を得た子は、ご褒美にと、例えば保護者にアイスクリーム屋さんへ連れていってもらえたりするそうです。そこで甘くておいしいアイスを食べる。これは結構大きな満足感です。

だけど、何度かアイスを食べたら、子どもたちはたいてい「もういい」となります。みんなから「U2」と呼んでもらえたり、保護者から褒められアイスを食べに連れていってもらったりするために、「U2」チャレンジを頑張っていたけれど、それらが満たされてしまうと、またそのために頑張ろう、という気持ちは起きなくなるみたいです。

「U2」の初期の頃は、達成者だけがもらえる「U2バッジ」というものを贈呈していました。獲得者は誇らしそうに、そのバッジを1日中着けていた。 しかし、やっぱり早いうちに、誰も着けなくなってしまいました。

彼らにとって、バッジを着けることに、それほど意味はなかったのです。

もちろん、着けている最中は、きっとみてみて欲が満たされていたことでしょう。

でも、得たものの輝きは短い。すぐに「こんなものは別にどうでもいい」という気持ちになっていきます。

いったん満足を得ると、なんと、みんな2分を切る回数が減っていきました。いったんクリアしたはずのラインをまた越えられなくなると、「こんなはずじゃない!」と焦り出してまた頑張り始めますが、もうその努力は、みてみて欲に支えられたものではなくなっています。

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