アメリカで活躍する「エンジェル投資家」の正体 イノベーションの促進のために日本にも必要

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まず、エンジェル投資家になる起業家・企業経営者などの層、数の厚みが圧倒的に異なる。さらに深堀りすれば、アメリカのエンジェル投資家の活躍には宗教の影響が大きいとみられる。アメリカには国教はないが、キリスト教、ユダヤ教の影響が隅々まで浸透している。積極的に働き、裕福になるための努力も結果も隠すことなくオープンだ。

そして、教会への寄付、慈善事業も積極的に行う。もちろん税金面の優遇という理由もあるが、宗教の影響により、「赤の他人を助ける」こと自体に違和感はない。

サンディエゴ在住のエンジェル投資家になぜスタートアップに投資するのかを聞くと、「もちろん収益をもらえることだよ。そして、自分のお金を使うことで、面白そうな事業に関わって、若い人を助けたい」と答えてくれた。「自分が投資し、赤の他人を育てる」意識、そしていつか自分の収益に結ぶという考え方はアジア文化には少ないと見られる。

日本には、古くから儒教に大きく影響され、「俗世を離れる」「お金の話をしない」いわゆる士農工商の思想が根本的にある。安定が何よりという価値観が強いため、ハイリスクハイリターンの投資をするより、安心できる貯金、保険にする。

成功した事業家も赤の他人に投資するよりも、もう1度自分で事業を起こしたり、うまく資産を子孫に残せるように工夫をする。投資家になりうる人でも、投資家になろうとする発想がそもそも少ない。

起業家、投資家のエコシステムもできていない

発想が少ないのも理解できる。なぜかというと、現在日本では「投資家になる」「投資家に投資してもらう」という経験が少ないからである。

前述のACAの調査によれば、アメリカでは55%のエンジェル投資家は以前自分で起業したり、またはスタートアップのCEOをしたことがある。しかもエンジェル投資家から支援を受けた経験がある人も少なくないだろう。これは、起業家と投資家の間で活発な循環(エコシステム)ができているということだ。

もちろん、いい選手になることといいコーチになるということは違うが、起業家としての経験を活かし、新規事業の助力になるのは一種の「社会還元」だろう。実際、アメリカでは、起業家経験があるエンジェル投資家の60%は新規事業のアドバイザー役をし、52%はボード(取締役会)に入っている。経験がないエンジェル投資家の場合は、38%と26%である。

筆者は2つのアメリカトップクラスのエンジェル投資家グループのミーティングに参加したが、起業経験がある、業界に極めて詳しい、MBAのバックグラウンドを持つエンジェル投資家がほとんどであり、プレゼンする起業家に的確なコメントをしていた。

日本では、政府・大企業に就職することこそ「成功の道」と思われる。起業して成功し、成功したらほかの人に投資するという考えを持つ人はまだごくわずかだろう。したがって、社会環境からも経験値からも、エンジェル投資家を育てることは難しい。

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