アメリカで活躍する「エンジェル投資家」の正体 イノベーションの促進のために日本にも必要
イノベーションを促進するため、新しいアイデアを持つスタートアップ企業を育てること、中でも資金調達は不可欠だ。スタートアップのファンディング方法を日米で比較すると、家族・親友、ベンチャーキャピタル、大企業、政府からというのは共通している。
いちばんの違いは、アメリカではエンジェル投資家(自分のお金で投資する人)の存在感が極めて大きいことだ。今回は、なぜアメリカではエンジェル投資家が活躍しているのか、そして日本のエンジェル投資家を増やすためのヒントを提示したい。
「死の谷」を救うエンジェル投資家は日本には少ない
スタートアップのライフサイクルには、「死の谷」がある。「死の谷」とは最初の自己投資(知人・家族が多い)を使い終わってから、ベンチャーキャピタル(VC)の支援を受けるまでの期間をいう。
一般的には、VCは一定の事業の見込みがあるアーリーステージ(起業後2~3年程度)に出資をするが、その前のプレシード(起業家のアイデアのみの段階)/シードステージ(会社設立準備段階)にはしない。スタートアップはその時期の資金繰りが最も苦しいのが実態だ。
アメリカでは、この時期にエンジェル投資家が活躍する。Angel Capital Association (以下、ACA)の調査によれば、2016年のアメリカのエンジェル投資家の年間投資額は240億ドル、投資したスタートアップは6.4万社以上。この2年間に投資したエンジェル投資家は30万人を超えている。エンジェル投資家の潜在的な規模は400万人とみられている。
また2018年には、68の主要な「エンジェル投資家グループ(詳細は後述)」が、905社に合計1170件の投資をし、投資総額は2億2800万ドルである。半分以上はプレシード/シードステージへの投資である。
一方、日本ではエンジェル投資家の存在感が極めて薄い。経済諮問委員会資料の調査によると、2011年度のエンジェル投資は約9.9億円で投資件数は45件しかない。2010年の投資家数は834人にすぎない。近年増えているようだが、スタートアップを下支えするエンジェル投資家の「不在」は日本のイノベーションの促進において大きな課題だといえる。
なぜ、アメリカと日本の状況はこのように違うのだろうか。
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