ラグビー日本が「最強アイルランド」と戦う意味 4年前の南アフリカ戦のような奇跡起こせるか

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アイルランドから応援に駆けつけたファン(筆者撮影)

外国人でにぎわうのは試合会場だけでない。全国12の開催都市に設けられたファンゾーンも連日、海外からの観戦客であふれかえる。

同ゾーンには大型スクリーンが設置され、ライブ観戦できるほか、元日本代表選手や国内最高峰のトップリーグで活躍する選手を招いたトークショーなども開かれている。大会のワールドワイドパートナーであるオランダのビール会社「ハイネケン」のバーも出店。ビール待ちの外国人が列を作っている。

試合談議に花を咲かせる彼らが手にするのはビール。とくにアイルランドファンの飲みっぷりはすさまじかった。試合前にはスタジアム周辺、試合中のスタンドでもよく飲む。そして、試合後は近くのバーなどで祝杯。ホテルへ帰るための電車にはアルコール飲料を手に乗り込むと再び、「ザ・フィールズ・オブ・アセンライ」を声高らかに歌い上げる。「ラグビーファンの1試合あたりの消費量はサッカーファンの6倍」という指摘も決して大げさではなさそうだ。

東京スタジアムの近くにある京王電鉄・調布駅前のファンゾーンには日本対ロシア戦の当日、1万1500人が足を運んだ。訪れた日本人からは「まるで日本じゃないみたい」との声も上がる。

会場のパフォーマンスも人気に

試合会場での演出も斬新だ。流れる音楽に合わせて観客がノリノリで手拍子をする。アイルランド・スコットランド戦のハーフタイムには、ジョン・デンバーやオリビア・ニュートン=ジョンの歌唱で知られる「カントリー・ロード」の歌詞が大型スクリーンに映し出されて大合唱。リードするのはアイルランドとスコットランドのファンだ。

日本人のファンでも一定の年齢を過ぎていればサビの部分は歌える人が少なくないだろう。アメリカ・メジャーリーグで7回裏の攻撃前に流れる「Take me out to the Ball Game(私を野球場に連れて行って)」さながらの光景だ。

開幕からの1週間で観客動員数はのべ42万人を超え、1試合の平均観客数は3万5517人を記録している。チケット販売も順調だ。決勝戦は11月2日。44日間にわたる大会開催期間中は、世界から日本ラグビーへの注目が高まる一方だ。

日本代表が4年前果たせなかった悲願の「ベスト8」進出に向け、最強のアイルランドにどんな戦いを挑むのか。日本ラグビーの真価が問われる戦いが近づいている。

(文中一部敬称略)

松崎 泰弘 大正大学 教授

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まつざき やすひろ / Yasuhiro Matsuzaki

フリージャーナリスト。1962年、東京生まれ。日本短波放送(現ラジオNIKKEI)、北海道放送(HBC)を経て2000年、東洋経済新報社へ入社。東洋経済では編集局で金融マーケット、欧州経済(特にフランス)などの取材経験が長く、2013年10月からデジタルメディア局に異動し「会社四季報オンライン」担当。著書に『お金持ち入門』(共著、実業之日本社)。趣味はスポーツ。ラグビーには中学時代から20年にわたって没頭し、大学では体育会ラグビー部に在籍していた。2018年3月に退職し、同年4月より大正大学表現学部教授。

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