渋谷の展望施設は観光の「弱点」を克服できるか 外国人対応の案内施設や展望台が今秋開業

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このほか、渋谷の回遊性に関する課題としては、坂道が多く、国道などでエリアが分断され、歩行者の移動動線に難があることや、何がどこにあるのかがわかりにくいことも挙げられる。

渋谷駅周辺の動線立体図(画像:東急)

渋谷駅周辺の再開発に伴い、地下と地上を結ぶ縦の動線は「アーバンコア」構想、また、水平動線はビル間を結ぶペデストリアンデッキの充実により強化する動きがあるが、これに加えて興味深いのが、11月1日から導入される駅の地下出入口に振られる新番号だ。

これまで、単に「1」、「3a」などと振られていた出口番号が、新しい番号体系では、駅周辺のエリアをAゾーンからDゾーンの4ゾーンに分け、「A4」、「C3」のようにする。Aゾーンはマークシティやハチ公広場方面、Bゾーンはヒカリエ方面というようになっており、地下から地上に出る際に、大まかなイメージがつかみやすくなる。

MaaSは導入しない?

最後に1つ疑問が残った。近年、鉄道各社などが力を入れている「MaaS(マース。モビリティ・アズ・ア・サービスの略)」を、回遊性向上のためにも、東急はお膝元の渋谷で導入する考えはないのだろうか。MaaSは、欧州の都市部での交通改善で誕生した概念だ。

東急がJRなどと組んで伊豆で進めているMaaSの実証実験の責任者である交通インフラ事業部課長の森田創氏に質問をぶつけてみた。

森田氏は「渋谷単体でのMaaS導入は予定していない。すでに公共交通が整備されており、MaaSにより合理化し、便利になる余地がほとんどないこと、また、MaaSは自家用車から公共交通利用に切り替えさせる政策誘導だが、日本の大都市ではすでに公共交通利用が浸透しているので、いまさらMaaSを進める積極的な理由も見出しにくい」という。

MaaSはヘルシンキが発祥だが、「ヘルシンキは自家用車率が異常に高く、都心部の激しい渋滞が社会問題化していた。Whim Unlimitedというヘルシンキのアプリは月500ユーロ(約6万円)払えば、タクシーを含めたすべての乗り物が乗り放題となるが、これは駐車場の月額料金と同額。つまり車を放棄すれば、同じ値段で夜は酒も飲めて、冬は凍った道をスリップせずに済む安全性を手に入れられるという価値に訴求している」(森田氏)。背景にある事情が東京とは大きく異なるのだ。

渋谷の観光課題解決に向けては、さまざまな組織が立ち上がり、政策提言を行っているが、やや組織が乱立気味ではないかと感じる。連携は取れているとのことだが、正直、どこが何の課題を扱っているのかが見えにくい。もう少し組織の絞り込みを行ったほうが、提言にもパワーが増すのではないだろうか。

森川 天喜 旅行・鉄道作家、ジャーナリスト

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もりかわ あき / Aki Morikawa

現在、神奈川県観光協会理事、鎌倉ペンクラブ会員。旅行、鉄道、ホテル、都市開発など幅広いジャンルの取材記事を雑誌、オンライン問わず寄稿。メディア出演、連載多数。近著に『湘南モノレール50年の軌跡』(2023年5月 神奈川新聞社刊)、『かながわ鉄道廃線紀行』(2024年10月 神奈川新聞社刊)など

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