渋谷の展望施設は観光の「弱点」を克服できるか 外国人対応の案内施設や展望台が今秋開業

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こうした動きは、渋谷の再開発のメインプレイヤーの1つである東急が掲げる「広域渋谷圏(Greater SHIBUYA)」構想とも重なるように思える。

東急はこれまで、青山や原宿、代官山などの周辺エリアも大きな渋谷圏ととらえ、例えば渋谷と原宿の結節点には「渋谷キャスト」、代官山との結節点には「渋谷ブリッジ」を開業するなど、「渋谷駅と周辺の街をつなぐ新たな歩行者回遊動線の創出を目的」(東急広報)とする開発を行ってきた。

渋谷二丁目17地区の再開発イメージ(画像:渋谷二丁目17地区市街地再開発組合)

さらに今後は「渋谷ヒカリエ」の裏手で国道246号に面する「渋谷二丁目17地区」を再開発することで、青山方面や「渋谷クロスタワー」への歩行者動線の強化も図るという。

ただ、この点について金山氏は「個別の商業施設の開発の効果は限定的だ。渋谷キャストもキャットストリートの起点に位置するとはいえ、中身はほぼオフィスとレジデンス。ファッションを目的に人が集まるということにはつながらない。むしろキャットストリートの中の店が元気になるほうが、回遊性を高めるきっかけになる」と、より広い面を意識した活性化施策の必要性を強調する。

観光案内機能が足りない

渋谷の回遊性が高まらない原因としては、観光案内機能の不足も挙げられよう。「渋谷は全国のセレクトショップのような存在。食べ物も新しいサービスも何でもあるがゆえに、逆に何をすべきか選びにくい」(金山氏)。つまり、適切なキュレーションが必要とされるのだ。

ハチ公前広場にある元東急電鉄5000系電車を改造した「青ガエル観光案内所」(筆者撮影)

ところが、渋谷の街を見渡すと、観光案内所が圧倒的に不足している。現在、観光協会が直営しているのは、「渋谷マークシティ」4階の案内所と、ハチ公前広場にある東急5000系を改造した「青ガエル観光案内所」の2カ所のみだ。

渋谷駅構内の宮益坂中央改札外には東急(10月1日以降は子会社の東急電鉄)が運営する案内ブースがあるが、原宿には案内所がない。原宿には芸能事務所のアソビシステムと提携した案内所「もしもしボックス」があったが、アソビシステムの事業撤退により閉鎖になった。こうした案内所の不足の裏には、渋谷区が観光産業に大きな予算を割けない事情があるという。

「渋谷区は、区の財政状況に応じて都が配分する特別区財政調整交付金の交付額が、他区と比べて極めて少ない。つまり、財源に占める住民税の割合が高くなっている。そのため、観光客が汚した街の清掃や、持ち込まれたゴミの収集に住民税が使われることに抵抗を感じる住民感情への配慮が必要となる」(金山氏)

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