渋谷の展望施設は観光の「弱点」を克服できるか 外国人対応の案内施設や展望台が今秋開業
そこで、同じく都内の展望施設である「東京スカイツリー」との比較で、渋谷スカイの集客を予想してみることにした。スカイツリーが開業した2012年当時とはインバウンドの状況が異なることや、屋内外の違いもあり単純比較はできないが、参考にはなるだろう。
スカイツリーの展望フロア面積は、展望デッキ(4100m2)、天望回廊(1740m2)あわせて5840m2。一方、渋谷スカイの展望施設全体のフロア面積は3000m2(スーベニアショップなどを含む)だ。エレベーター数はスカイツリーが4基、渋谷スカイが2基であり、渋谷スカイの施設規模はスカイツリーのおよそ半分ということになる。
加えて、渋谷スカイのエレベーターのほうが小型であること、天候の影響を受けやすい屋外型施設であることなどを考慮すると、渋谷スカイの開業後1年間の入場者数は、スカイツリーの実績値である約638万人の半数を下回る200万~250万人と筆者は予想する。それでもかなりのインパクトだ。
街の没個性化で回遊性が低下
しかし、渋谷駅周辺はオフィス床の増加などにより、現状でも人があふれている状況だ。観光の目玉となる施設ができても回遊性が高まらなければ、オーバーツーリズムの弊害が増すだけになる。
そもそも渋谷で観光客の回遊性が乏しいのはなぜなのか。渋谷区観光協会理事長の金山淳吾氏は、「渋谷は2000年代からオフィス床が増加し、それまでの若者が文化的体験をしに来る街から、オフィスワーカーの日常を支える街にシフトした。これにともない、とくに表通りはチェーン店が増え、没個性化した。ファッションや音楽の”聖地”と言われるような店が姿を消し、回遊する意味のない街になってしまった」と、街の没個性化が大きな原因であると分析する。
実は、この没個性化した街に「渋谷らしさ」を取り戻そうという動きが、長谷部健渋谷区長が掲げる「ちがいを ちからに 変える街。渋谷区」という基本構想のもとで進められている。
「いろいろな人たちが個性的なチャレンジをできる街にしようというのが基本的な考え方。これを進めることで、さまざまな場所にクリエイティブカルチャーが育ち、回遊性を取り戻せるのではないか。今の渋谷は、その途上にある」(金山氏)という。
具体的には、神宮前二丁目付近には、LGBTの人たちが過ごしやすい場所をつくる。また、初台や参宮橋周辺には、ファッションの集積地としての魅力を創出できないかということで、高架下の利用などを模索しているという。こうした動きが進めば、近年、注目されるようになった神山町周辺の「奥渋谷」同様、エリア自体が新たにブランディングされることも期待される。
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