多目的トイレ使う健常者が全く気づかない視点 障害者の不便な現実から逆算する必要がある

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安部:ただでさえ時間がかかる方と、さらに健常者も使えるとなると、なかなか空いてない。

上原:そうなんですよ。健常者はトイレに入ったら、選択肢がいくつかあるわけじゃないですか。

それが、「多目的トイレ」は大体どこも1つしか用意されていないから、僕らはつねに1択しかない。なのに健常者に使われてしまっていることもあって、それはやっぱり健常者にとって完全にひとごとだからだなと。

安部:いやぁ、本当にそうですね。

上原:それに、そういうトイレにはベビーシートがありますよね。だけど、ベビーシートは赤ちゃんしかおむつ替えできない。高齢者の人がおむつ替えしようとしたときに、あそこに乗せられないでしょう。

おむつ替えを必要とする人は赤ちゃんだけではないはずだが…(写真:リディラバジャーナル)

安部:うん、絶対無理ですね。

上原:つまり、おむつ替えを必要とする人は赤ちゃんだけではなく、高齢者のほかにも何らかの病気を患っている人なども含めて、たくさんいます。なのに、なぜ「ベビーシート」なのか。あれがベッドくらいの大きさがあれば、それこそ“だれでも”利用できますよね。

実際に障害者はじめ、ベビーシートに乗れない人たちがどうしているかというと、やむをえず床にシートを引いておむつ替えをしているんです。

安部:それは不衛生だ……。

経済合理性からもトイレは重要

安部:多目的トイレは、そもそも想定されている人が多すぎるということですが、実際に多目的トイレを必要とする人はどのくらいいるものなんですか。高齢者も含めるとなると、かなりの数がいそうですよね。

上原:バリアフリーが必要な人は、日本に4000万人いるといわれていますね。

安部:日本人の人口が1億2000万人として、その3分の1が適切なトイレ環境がない状況に直面しているということですね。それであれば、今あるトイレをすべてバリアフリーにする、つまり多目的トイレのようにするという考え方は行き過ぎですか。

上原:本当はそれもありですよね。現実的には難しいだろうけど。でもやっぱりバリアフリーをどこまでやるのかについては、もう少しできるかなと思うことは多いです。

安部:だって4000万人が不便を感じているんですからね。

上原:トイレ問題は、あらゆるところでポイントになるんです。というか、そもそも健常者でもトイレのない場所には行かないですよね。

例えば、車いすユーザーにとっての観光。僕のような車いすユーザーが観光に行くじゃないですか。そこで、多目的トイレなのか、用を足すことが問題ないとわかれば、安心して行けますよね。そうしたら、リピート率は約8割くらいになるんです。

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