多目的トイレ使う健常者が全く気づかない視点

障害者の不便な現実から逆算する必要がある

安部:なるほど。

上原:障害者は、最初は不安だから1人でとか身内と一緒に行くわけですが、安心して行けることがわかれば、今度は友達と行きたくなる。そうなると、5人とかを連れてくるんです。

つまり、トイレをはじめとするバリアフリーをしっかり整備して1人の車いすユーザーの心をつかまえられれば、8割ぐらいの確率でさらに何倍もの収益を生むことがある。

だから最近、バリアフリーのトイレをつくることが観光事業をさらに促進しますよといった話を行政関係の人にもしているんです。

安部:それは大いにありそうですね。きれいなトイレだけでも人が動くと言うし、それがバリアフリーのトイレになったら、さらに多くの人が動くぞと。

障害者自立支援法の中に、1人ひとりの特徴や場面に応じた個別の調整をする「合理的配慮」というワードがありますよね。でも合理的配慮は玉虫色で、どこまでやるのかと。

ビジネスサイドとしては、個別的な対応をするほど追加でコストがかかる。だからそれぞれの事業者に委ねられている状況なわけですが、経済合理性からも説明ができるということですね。

合理的配慮とは互いに配慮すること

上原:ほかにも商品開発がわかりやすいんですが、なるべく初期段階から障害者の視点を入れるべきだという話があります。

例えば、ジャパンタクシーなんかはロンドンタクシーをまねてつくっていますが、中身はまねられていない。スロープを出す方法をはじめ、障害者が乗りやすくするためのまねが根本的にできていません。

それには、やっぱり設計段階のどこで障害者の意見を入れるかなんです。日本はある程度フレームワークができてからどこかの障害者団体の意見を入れますけど、本来は初期段階から入れる必要がある。

ただ初期段階で入れるほど権利主張をしたがる障害者がいて、設計工程で面倒が増えることもあるのは事実。僕は、権利主張ばかりをする人を「ポンコツ障害者」と呼んでいるんですけども。

安部:というと?

パラリンピック銀メダリストアスリートの上原大祐氏(写真:リディラバジャーナル)

上原:例えば、ある障害者に配慮するものをつくったら一部の人にとっては便利になるけど、違う障害を持つ人には大して便利ではないというケースもある。

それに対してポンコツ障害者は「全然ダメだ!」というわけですが、すべての障害に対して配慮するのは無理なわけです。

もちろんあらゆる障害者のために合理的配慮をして調整するべきなんですが、障害者側も配慮に対する配慮は必要。お互い配慮することが、合理的配慮だと思っているんですよね。

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