逆に言えば、現代の平均寿命が長くなったのは、乳児死亡率が低くなったからです。つまり、平均寿命が短いということは乳児死亡率が高いことであり、乳児死亡率が高い時は出生率も高いのです。たくさんの子が死ぬ(乳児死亡率が高い)時代は、それだけたくさん産むようになっていたわけです。
そして医療の発達などで乳児が死ななくなれば、そもそも女性は出産をしなくなります。事実、乳児死亡率と出生率との相関係数は0.9341と高いものになっています。
日本の出生率と死亡率の推移
繰り返しますが、これは、全世界的に共通する動きです。人口学的には、人類は「多産多死→多産少死→少産少死→少産多死」というサイクルで流れてきています。
1899年からの日本の出生率と死亡率の推移をこの4つのステージにあてはめると非常によくわかります。戦前までは出生率30以上、死亡率16以上の「多産多死」時代でした。戦前の死亡が多かったのは、戦争や関東大震災など災害によるものだと思いがちですが、死亡の最大の原因は病気です。そして、その病気の最大の犠牲者が乳児たちでした。
1918年は出生千対の乳児死亡率が189もありましたが、これはその時期世界的に猛威をふるったスペイン風邪の影響です。乳児死亡率が初めて100を切ったのは1940年のことです。「七つまでは神のうち」という言葉が言われていたように、7歳まではいつ死んでもおかしくない状態でした。七五三をお祝いするのはそんな意味合いもありました。
戦後は、生活環境の改善と医療技術の発展により、乳児死亡率はすさまじい勢いで減少していきます。戦後2度のベビーブームの影響もあって、日本は「多産少死」時代へ入りました。戦後の1951年から2011年まで、日本の死亡率はわずか10.0未満の状態が60年間も続きました。
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