グーグルはなぜモトローラを売ったのか レノボにとってもグーグルにとってもプラス効果

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グーグルのラリー・ペイジCEOは「モバイル市場は過当競争であり、モバイル関連のデバイス製造には、全て揃っていることが肝心 」と、19カ月間という短い期間でモトローラを手放した胸の内を説明している。今回のグーグルの決断に対し、シリコンバレーのアナリストたちは肯定的だ。

「市場調査では、中国のベンダーがスマートフォンとタブレット市場のシェアを増加させていくと予測されている。彼らは豊富な資金を持っており、世界で苦戦中の事業を次々に買収していくのは当然の流れだ」--こう語るのは、ドリームスケープ・グローバル、プリンシパル・アナリストのシェリダン・タツノ氏。一方、グーグルは引き続きレノボから特許使用料を受け取るだけでなく、「アンドロイドを世界中に広めることができる。その上、レノボがサムスンに対抗する勢力となれば、アンドロイド上の利益を最大化できる」と、前述のタツノ氏は語る。

コンステレーション・リサーチで代表アナリストを務めるレイ・ウォン氏は「グーグルは中国の検索市場ではわずか2%未満 に過ぎない。そこで、グーグルはレノボを介して、モバイル上の検索で中国進出が可能になる」という。同時に「今後ともグーグルがモトローラの主な特許を持ち続けることの意義は大きい」。

マイド・メディアの主席アナリスト、フィル・キー氏はグーグルのモバイル部門のトップ、アンディ・ルービン氏が「グーグルは他のアンドロイドのOEMパートナーとは競合しない」と明言した点を重視する。「グーグルはモトローラ売却で毎年の営業損失を減らせるだけでなく、アンドロイド端末メーカーとの緊張関係が緩和するだろう」。グーグルがハード製造に走らないという決意表明になるため、サムスン電子、LGエレクトロニクス、ソニーなどのOEMパートナーが安心してアンドロイドを使い続ける、というわけだ。

Tizenは苦しくなる?

今回の売却に絡んで、「レノボからNexusシリーズが発売される」という噂が流れている。Nexusはグーグルが選んだハードメーカーと組んで発売するアンドロイドを搭載したスマートフォンやタブレット端末。これまで台湾のHTC、ASUS社、サムスン電子がパートナーに選ばれているが、次はレノボというわけだ。

また、モトローラ売却でアンドロイドに替わるOSともいわれきた「Tizenを強力に後押ししていたサムスンが、Tizenから手を引く可能性」(フィル・キー氏)が高くなるという。競争の激しいモバイル事業の世界市場攻略戦は、今回の売却で、また新たな展開を見せ始めている。

Ayako Jacobsson ジャーナリスト

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アヤコ・ジェイコブソン / Ayako Jacobsson

山口県徳山市生まれ、広島市で育つ。東京都立大学(現首都大学東京)法学部卒業、英ケンブリッジ大学、コロラド大学ボルダー校で学ぶ。在学中、AP通信東京支局で編集アシスタント、卒業後はビジネステレビのディレクターとして「ウォール・ストリート・ジャーナルを読む」「製造物責任法」等を担当。その後、読売新聞英字新聞記者として、通信、テレビ、映画、ホテルなどの業界を取材した。ペルーのフジモリ元大統領へのインタビューも行った。1999年頃からシリコンバレーに拠点を置き、取材・執筆活動を行っている。

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