──どんな日本語になりますか。
東京外国語大学の荒川洋平教授は、話すコツを「ハ・サ・ミ」にまとめています。はっきり、さいごまで、みじかい文で、を表します。当然、日本語学習初級者が習うような単語、文法を使います。ただ、観光における「やさしい日本語」に絶対はないので、外国語が交じってもいいし、最初と最後は日本語で、くらいでもいい。重要なのはコミュニケーションの点火。
インバウンドに関する世界規模の調査では、日本はインバウンドが「利益になった」「迷惑になった」ともに比率が低い。興味がないんです。コミュニケーションがすべての始まりなので、「やさしい日本語」で点火してほしいのです。
外国人にとって「言語のお土産」になる
──日本語使用のメリットは?
メリットは日本人、インバウンドの双方にありますが、日本人のほうが大きいと思います。
まず、心理的な壁が低くなります。日本語で話しかければいいのですから。先日伺った徳島・奥祖谷(おくいや)のそば打ち体験工房には20~30人の外国人団体客が来ることもありますが、講師役の女性は基本的に日本語で対応します。「ご当地弁で自分の思いをしゃべるのがいちばん通じると思う」というのが理由です。
人間関係も変化します。客と店は通常上下の関係ですが、難しい言葉を取り去って身ぶり手ぶりも加えるとフレンドリーな雰囲気になる。もっとも、観光はサービス業なので「敬語を使いたい」という声は聞きます。それなら、例えば「何を召し上がりますか」の後に「何を食べますか」と言えば、相手は2つが同じ意味とわかり、勉強にもなります。
──外国人には何がプラスに?
言語のお土産。京都のタクシー運転手の話では降車の際に「おおきに」と言う外国人観光客が多いそうです。外国人にとっては日本に行って日本語を覚えた、日本人と日本語でコミュニケーションしたということがお土産になるんです。気づきにくいですが、立場を変えればわかるでしょう。外国語を学んで彼の地に行けば、使いたくなるのが人情です。コミュニケーションなしでスマホ見ながらの旅行が楽しいでしょうか。
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