デジカメ業界は、需要低迷と価格下落が顕著、一眼レフの拡大や開発力向上がカギ《スタンダード&プアーズの業界展望》

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アナリスト 天野待知子

デジタルカメラは日本のメーカーが圧倒的に強く、自社ブランド品で高シェアを誇る。しかし、世界規模での急速な需要低迷で各社の採算性は大幅に悪化している。キヤノンとソニーの2強体制は当面揺らぐことはないとみられる一方、需要低迷と価格下落が長引くと中位・下位メーカーにとっては撤退も選択肢となる。

カメラ映像機器工業会によると、2008年のデジタルカメラの世界総出荷実績は、数量ベースで前年比19.3%増の1億1、975万台と、2007年の好業績に続き高い伸びを示した。新興市場での需要拡大に加え、先進国での買い替え・買い増し需要や、デジタル一眼レフカメラによる市場活性化が支えた。しかし、2008年秋以降、急激な景気後退や価格競争激化、円高の影響から、2009年の世界のデジタルカメラの総出荷数量見通しは前年比0.7%減の1億1,897万台になるとしている。キヤノンとニコンが圧倒的なシェアを誇るデジタル一眼レフが牽引役で、台数ベースで6.8%の伸びを見込む一方、市場の9割を占めるコンパクトデジタルカメラは1.3%の減少を予想している。

スタンダード&プアーズは世界の大手デジタルカメラメーカー7社に格付けを付与している。格付け水準は、キヤノンの「AA」から米イーストマン・コダックの「B」まで幅広い。各社のデジタルカメラ事業の信用力分析上の比重は異なる。表1に示したリスク評価にはデジタルカメラ以外の事業に対する評価が織り込まれている。好況期にあっても、スタンダード&プアーズは、デジタルカメラの事業リスクは比較的高い、という従来からの見方を変えていないため、事業リスク認識に大きな変更はない。

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国内市場は競争激化

世界のデジタルカメラ市場はキヤノンとソニーの2強体制である。キヤノンはコンパクト型から一眼レフまで幅広い顧客層向けの商品・価格構成で首位(2007年の世界出荷台数ベースで約2割)を守った。ソニーはブランド力と新興国市場での強みを発揮し、僅差でキヤノンを追い上げている。欧州を中心に販売を伸ばしている韓国サムスングループのサムスンテックウィンは世界5位から3位と躍進した。

一方国内のデジタルカメラ市場は、キヤノン、パナソニック、カシオ計算機、ソニー、オリンパスがそれぞれ19%から11%程度のシェアでひしめき合っている。5社で2008年の国内販売金額全体の約7割を占める市場で、海外勢の台頭が、中位以下の日本メーカーにとって脅威となっている。低価格品を武器に米イーストマン・コダックはシェア上位を維持した。

もともとデジタルカメラ市場はカメラメーカーと家電メーカー10数社がしのぎを削る厳しい状況下で、コニカミノルタが同事業から撤退し、ペンタックスがHOYAの傘下に入った。富士フイルムはデジカメ事業を再構築中である。足元の需要低迷が続けば中位以下のメーカーにとっての生き残りは容易ではなく、下位メーカーは撤退も選択肢となろう。

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