デジカメ業界は、需要低迷と価格下落が顕著、一眼レフの拡大や開発力向上がカギ《スタンダード&プアーズの業界展望》
高い事業リスク−−主要市場で需要が鈍化、老舗メーカーの信用力も引き続き悪化
スタンダード&プアーズは従来から、主要先進国市場の成熟化、熾烈な商品競争、価格下落、短い商品サイクル、在庫リスクなどから、デジタルカメラの事業リスクは比較的高いと考えている。
機能や技術が成熟期に入り、先進国市場の成長余地が乏しいことに加えて、急激な需要減少と円高の影響で、販売価格の下落が続いている。2008年12月のコンパクトデジタルカメラの平均販売価格は前年比8%下落した。キヤノンをみると、2008年12月期のデジタルカメラ販売台数は前期比4%増え、世界首位を維持したが、第4四半期は前年同期比9%減だった。コンパクト型の販売単価は20%、一眼レフは12%それぞれ下落した。急激な需要の冷え込みで、価格競争が再燃しており、収益環境の悪化や業界再編が起こる可能性がある。
国内世帯普及率の高さと消費の冷え込みから、国内需要は今後数年間、横ばいあるいは微減だろう。今後2年程度の間に日本の自社ブランド・メーカーのうち数社が撤退ないし事業縮小をする可能性があるとみている。また北米と欧州では、短期的には足元の景気減速の影響が懸念されるほか、中長期的にも市場の成熟化が進んで販売の伸びが鈍化する見通しである。
スタンダード&プアーズは2008年10月29日、キヤノンの長期会社格付け「AA」のアウトルックを「ポジティブ」から「安定的」に変更した。大幅な円高と、一部主要製品の景気減速などによる需要低迷や価格下落により、収益への下方圧力が強まっており、今後1−2年の間に同社の格付けが引き上げられる可能性は低下したと判断したからである。2007年12月期まで8期連続で過去最高益を更新してきた同社の業績は、大幅な円高と、景気減速に伴う複写機の需要低迷、価格競争の影響を受けたコンパクトデジタルカメラの販売価格の下落から、2008年12月期に一転して減収減益となった。ただ、主力の複写機・プリンターの消耗品は景気の影響を受けにくく、価格下落も起こりにくいことから、引き続き収益を下支えするだろう。高いキャッシュフロー創出力に裏づけされた強靭な財務基盤も維持されているため、現時点で想定される業績面での下方圧力は十分に吸収できると考えている。
スタンダードプアーズは1月30日、イーストマン・コダックの格付け「B」を据え置き、格下げ方向でのクレジットウォッチを継続すると発表している。格付けの見直しは同社の第4四半期の業績不振、取引先金融機関との間でのコベナンツ交渉、そして大規模なリストラ策の発表を受けたものである。世界同時不況、信用収縮、そして急激な為替変動により、同社のデジタル事業収入は前年同期比23%減となった。ネガティブなキャッシュフローにもかかわらず、積極的な配当方針を維持する見通しである。クレジットウォッチの解除にあたり、財務方針や流動性、キャッシュフローの見通しを精査する。1998年には「A+」であった同社の信用力が今後どの程度悪化するかとともに、業界への影響も注視していく。