日本の裁判「電子化」が圧倒的に後れを取る弊害 訴訟社会を喚起するリスクあるが不便も多い
最近は、病院での入院時、あるいは保育園や幼稚園の入園時に、承諾書や同意書に山のようにサインをさせられる。かつてはなかったこれらの書類が何のためにあるのか。考えたことがあるだろうか。
簡単に言えば、「訴訟リスク」を回避するための書類と言っても過言ではない。不動産取引のように法律で定められたものも一部あるが、世の中が複雑化してくるに従って、企業はつねに訴訟リスクにさらされているともいえる。
こうした訴訟リスクの背景には、日本の民事裁判が複雑で、手間がかかり、非効率的であるという指摘があるのも事実だ。
民事裁判の電子化、やっと重い腰を上げた最高裁?
日本が、先進国どころかアジア各国に比べても遅れている分野というのは、実は数多くある。その1つが裁判の電子化がまったく進んでいないことだ。シンガポールでは1998年に裁判書類の電子化がスタートしており、韓国でも2010年、中国でも2017年にインターネット法院がスタートしている。
今や裁判の電子化は国際的な常識であり、「紙」をベースにした裁判は世界の流れから大きく遅れているといっていい。
日本の電子化が遅れているのは裁判に限ったことではないが、裁判の判決が出るまでの審理期間の長さや裁判の長期化による訴訟コストの高さなど、日本全体に悪影響を与えているという指摘もある。企業の生産性や効率化を阻んでいるケースもある。
そんな状況の中で最近になって、2017年6月に閣議決定された「未来投資戦略2017」で、裁判手続き等のIT化が検討議題となり、2018年には検討会がとりまとめ文書を公表。現在は、大学教授や弁護士で構成され、最高裁も参加する「民事裁判手続等IT化研究会」で、民事裁判の審理を半年以内で終える新制度の導入について、最高裁が今年の7月に原案を提示したと報道されている。
日本でもやっと「訴訟の迅速化」がスタートすることになりそうだが、早ければ2021年度にも裁判所への準備書面などのWEB提出方式を導入することになりそうだ。
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