日本の裁判「電子化」が圧倒的に後れを取る弊害 訴訟社会を喚起するリスクあるが不便も多い
1度訴えを起こされてしまうと、日本では一般的な民事裁判は平均で16カ月かかるために、意味のない裁判であってもコストや時間がかかってしまう。
あらかじめ訴訟を起こされないためのさまざまなリスク回避措置がとられているわけだ。日本の裁判制度の遅れがもたらしているさまざまな弊害について考えてみたい。
日本の司法の利便性は世界第52位?
日本の裁判制度、とりわけ民事裁判や行政裁判の電子化に対する遅れは、国際競争にさらされている日本企業にとっては企業経営のスピードにも関係してくる。スピード感が必要な現代の企業経営にとって、司法の遅れはビジネス・チャンスを逃し、より高いコストを支払わなければならないものともいえる。
例えば、世界銀行が毎年実施している「ビジネス環境ランキング2019年」によると、日本の司法の利便性(契約執行状況)は「世界第52位」。裁判所の構成及び裁判手続き、事件管理、裁判の電子化といった項目で総合的に判断されているランキングだ。
2010年には、27位だったのだが、この8年で52位まで下げた。ちなみに、最新ランキングのOECD上位の1位は韓国、2位ノルウェー、3位オーストラリアだった。
民事裁判手続きのIT化は、前述したように最高裁も参加する研究会で詰められているが、2020年2月に予定されている法務大臣の諮問機関である「法制審議会」で諮問される予定になっている。
日本の裁判の電子化が進んでいない背景には、財政赤字などでそれなりに予算がつかないというのもあるかもしれないが、紙ベースにしておいたほうが便利なものもあるのかもしれない。例えば、判決文などは残っているものの、憲法に関する裁判記録などはその大半が破棄されていると報道されている。政権にとって都合の悪いものは、裁判記録であっても破棄してしまえば跡が残らない。
ちなみに、同ランキングでは倒産処理の項目では世界1位に輝いている。2014年以降しばらく2位だったのが、2018年には再び1位に返り咲いた。倒産処理に関しては抜群の処理能力があるにもかかわらず、裁判スピードは遅いわけだ。
いずれにしても、日本の民事裁判手続きは近年減少傾向にあるものの、ここに来てやや増えつつある。新しく受けつけた「新受事件」の数は、横這いもしくはやや増加傾向にある(民事・行政事件、全新受裁判)。
・平成26年……145万5734件
・平成27年……143万2332件
・平成28年……147万647件
・平成29年……152万9383件
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