「明るい曲」が流行すると景気は良くなる テキストマイニングで相関を分析してみた

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ヒット曲の歌詞の明るさと景気には相関関係があることがわかったが、これだけでは「好景気だから明るい曲が流行った」のか「明るい曲が流行ったから好景気になった」のかという因果関係はわからない。そこで、両者のデータを1年ずつずらして時差相関を求めたところ、歌詞データの極性スコアを先行させたほうが相関係数は大きくなった。時差相関の関係からは、明るい曲がはやってから3年程度は好景気が続く傾向があることがわかる。

この結果から「景気は気から」である可能性が高く、明るい曲がはやることで世の中も明るくなり、景気が良くなるという因果関係を見出すことができる。

歌詞データとIMF、どちらが勝つか

明るい曲の流行が景気に与える影響を推計すると、歌詞データの極性スコアが1単位上昇する(明るくなる)と、名目GDP成長率は約0.026%加速する。歌詞データの極性スコアの前年差の標準偏差は55ポイント程度であるため、昨年より1標準偏差分だけ明るい曲が流行すれば、名目GDP成長率は約1.4%加速することになる。

それでは2019年はどうか。年間ヒット曲トップ10がまだ分からないため、7月第1週のヒット曲トップ10を用いて、最新の歌詞データの極性スコアを算出した。2018年の年間ヒット曲トップ10のスコアは▲350であり、19年7月第1週のトップ10の極性スコアは▲351と若干だが低下した。つまり暗い曲が増えた。19年やその後数年の名目GDP成長率は、18年のプラス0.7%を下回る可能性があるということだ。

IMF(国際通貨基金)の最新(19年7月)の経済見通しによると、日本の実質GDP成長率は18年がプラス0.8%、19年はプラス0.9%と見込まれている。名目GDP成長率は物価の動向にもよるが、年後半にかけて明るい曲が流行しなければ、IMFの経済見通しも下方修正される可能性が高くなるだろう。

末廣 徹 大和証券 チーフエコノミスト

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すえひろ とおる / Toru Suehiro

2009年にみずほ証券に入社し、債券ストラテジストや債券ディーラー、エコノミスト業務に従事。2020年12月に大和証券に移籍、エクイティ調査部所属。マクロ経済指標の計量分析や市場分析、将来予測に関する定量分析に強み。債券と株式の両方で分析経験。民間エコノミスト約40名が参画する経済予測「ESPフォーキャスト調査」で2019年度、2021年度の優秀フォーキャスターに選出。

2007年立教大学理学部卒業。2009年東京大学大学院理学系研究科物理学専攻修了(理学修士)。2014年一橋大学大学院国際企業戦略研究科金融戦略・経営財務コース修了(MBA)。2023年法政大学大学院経済学研究科経済学専攻博士後期課程修了(経済学博士)。

 

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