内陸を走る総武線の「海抜」が京葉線より低い謎 地盤沈下で海沿いの埋立地と高さが逆転

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なお、京成本線より地盤沈下の激しいエリアを行く京成押上線荒川橋梁は、平成14年に架替が完了している。また総武線荒川橋梁も、周辺区間の線路増が行われた昭和47年の竣工なので、その後の地盤沈下の影響はほとんど受けてないと考えられる。

こうした地盤沈下被害とは逆に、地下水の汲み上げを止めたことによる障害も起きた。昭和60年に開業した東北新幹線の上野駅。新幹線ホームは地下約30mのところにある。

同駅建設の測量が行われた段階では地下水位は新幹線ホーム予定位置より数m下だった。しかし地下水汲み上げが停止になってから年月が経つにつれ、地下水位はどんどん上昇し、開業10年後には、地下水位が地下約15mまで上がってきた。そのため地下駅は地下水による浮力を強く受けることになった。

地下が「浮く」上野駅

コンクリートや鉄でできた地下駅が浮くというのは奇妙な気がするかもしれないが、要は浮力により建設当時にはなかった上向きの力が働き始めたのである。それによる駅構造のダメージを防ぐため、上野駅の地下部分には、現在までに数万トンの鉄塊の設置やアンカーボルト数百本の打ち込みがなされている。

総武線の浅草橋―両国間。乗っていると海抜の低い土地だとは気づきにくい(筆者撮影)

地下水の大量汲み上げという形で一度自然に大きな手を加えると、後々までその影響はさまざまな所に表れるという一例である。

海抜の低い土地は、高潮、洪水などのリスクが高い。電車に乗って車窓を見るのは楽しいが、残念なことに景色からだけでは土地の高さはわからないし、京葉線と総武線の例のように誤解もしやすい。

都内ではとくに海抜の低い地下鉄駅の出入り口に海抜表記がなされている。そうした点にも注目して、平坦ではない東京東部の地形にもぜひ関心をもっていただければと思う。

内田 宗治 フリーライター、地形散歩ライター

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うちだ むねはる / Muneharu Uchida

主な著書に、『地形と歴史で読み解く 鉄道と街道の深い関係 東京周辺』(実業之日本社)、『外国人が見た日本 「誤解」と「再発見」の観光150年史』(中公新書)、『関東大震災と鉄道』(新潮社)など多数。外国人の日本旅行、地震・津波・洪水と鉄道防災のジャンルでも活動中。

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