中国の8%成長維持は難しい、景気対策の4兆元投資は時代遅れ--茅于軾(ぼううしょく)・北京天則経済研究所理事長

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--どのように調整すべきでしょうか。

いくつか方法がある。まず、低賃金の労働力に依存した輸出加工業は必然的にインド、バングラデシュ、ベトナムなどにシフトすることになるだろう。彼らの労働コストは中国よりも低いが、政府の管理規制など総合的な条件で中国が投資を集めていた。現在では、インド、ベトナムなどの状況もかなり改善され、中国の一部産業があちらへシフトすることが現実味を帯びてきた。つまり、低賃金で環境負荷の高い企業は中国から退場するということだ。その代わりとして、これからは技術や管理のレベルが競争力となるような産業を発展させていく必要がある。

特に民間企業は十数年の発展を経て、技術的にも相当進歩した。世界の一流企業と比べても遜色なく、極めて優秀だ。たとえば、広東の華為技術(広東省に本社を置く通信機器メーカー。08年の特許出願数は世界一)などは完全に世界レベルだといっていいだろう。

低付加価値の企業は倒産、あるいは退出することになるが、付加価値の高い企業はより一層発展するだろう。輸出への依存が減少し、低かった賃金が上昇し、環境保護も改善していく。これこそまさに理想的な調整だ。技術と管理の向上を拠り所とする産業が伸びていくのだ。

さらに中国経済の問題として、サービス産業の遅れが挙げられる。現在に至ってもGDPに占めるサービス産業の比率は40%にも及ばない。この十数年間でGDPの規模は2倍以上に成長したが、サービス産業の比率はわずかしか伸びていない。

政府は往々にしてモノの生産を重視し、サービスの生産を軽視する。しかし、サービス産業を発展させれば内需を拡大し、外需依存を減らせる。同時に民間セクターへの分配を増やす効果も期待できる。

もう一つの問題は、政府の税収の増加率が高すぎることだ。GDPの倍のペースで税収が伸びている。中国の公共サービスのレベルの低さを考えれば、これは見直す必要がある。直接税比率が低く、間接税比率が高い税制も改めるべきだ。

--国有企業が実質独占している産業が多いですが、この状態を変えることはできますか。

この問題が改善できないのは、政府が国有企業を管理することで多くのメリットを得ることができるからだ。国有企業のトップは政府が派遣した人間だから、政府の国有企業へのコントロールは極めて強い。それゆえに、企業のトップはあらゆる方法を使って政府にメリットを与えている。国内の景勝地にある研修センターのほとんどは、国有企業が政府のために建てたものだ。

よほど社会に大きな変化がないかぎりこの仕組みは変えられまい。政府は既得権益を放さず、庶民は無力だ。全人民所有とは名ばかりで、実質的にはまったく庶民とは無縁だ。

--分配の見直しを進めるとなると、経済だけでなく、政治のあり方や法治の問題にもかかわってきます。

今の政府はそんなに長期的なことまで考えられない。目の前の問題を解決するのに手いっぱいで、とても将来のことにまで頭が回らない。国有企業改革も含めて、現在のリーダーに大きな改革をする力量はない。彼らも10年経てば辞めていくのだ。

�小平であれば号令一下、状況を変えることができたが、今の指導者には彼のような権威がない。国有企業のような強力な相手を動かすようなことはできない。仮にその気があっても力不足だ。就業問題や、社会不安など切羽詰まった問題に対応するのが精いっぱいだ。

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