店舗数を急激に増やす飲食店はだいたい危ない ゆで太郎・富士そば社長対談(下)

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拡大志向ではなく、各店舗がきちんと利益を出して、従業員にもちゃんとした待遇ができる店舗をいかに増やせるかが大事だという。(左)「江戸切りそば ゆで太郎」の池田智昭社長、(右)「名代富士そば」の丹有樹社長(撮影:梅谷秀司)

池田:私も言いました。別に安売りしていると思っていない、これが適正値だと思ってますよ、という。

:当時、もりそばは280円だったのですが、富士そばが250円の流れに乗っていたら、立ち食いそば全体の流れも大きく変わったんだと思うんですよね。その頃は父親が社長でしたけど、社長はもう安売りしていいことは何もないと。利益も減るし従業員も疲れるし、嵐が過ぎ去るまでのんびりしてよう、みたいなことを言っていました。

あの流れが終わるまで、結構大変でしたけど、あれに乗っかってしまうことのほうが、困難が増えると思いましたね。われわれとしては、今の値段が適正値というか、むしろ安すぎると思っているので、何とかもうちょっと上げる工夫をしていきたいと思います。

数を目標にすると飲食はいろんなものが狂う

池田:私も適正値は、今よりもうちょっと上だろうと思っています。ギリギリで頑張っちゃったら、なんかひずみが起きるような気がするんですよね。やっぱり無理はいけないですよ。ちゃんと従業員待遇を考えないと。

:先ほど拡大志向ではなく、150~160店舗くらいを目指すという話をしましたが、それは利益をしっかり出せる150、160店舗ということです。

そこから先利益が保てる店を出していければいいのですが、時代の流れとともに駅自体が寂れていったり、町の流れが変わっていったりというところも出てくると思います。そういう中で、各店舗がきちんと利益を出して、従業員にもちゃんとした待遇ができる店舗をいかに増やせるか、という話だと思います。

そこに目標数字とかが出てくると、とくに飲食は途端にいろんなものが狂うかな、という感がすごくあります。

池田:飲食で上場すると必ずブチ上げるでしょ。年間100とか200店増とかって。必ずおかしくなる。お金はあるけど、人がついていけなくなるでしょう。そんな簡単ではないですよ。だいたい儲からないんだからね(笑)。「飲食って儲かりますか」という人には、「儲からないよ」って伝えますね。

:店舗数が急激に増えて店員の質が落ちた、とかいうのはよく聞く話ですよね。

池田:1店舗増えたら店長を1人増やさないといけないわけですが、そこが粗製濫造的になりがち。でも店舗数が増えていかないと従業員は面白くないし、チャンスを与えればやる人もいる。そこはなかなか難しいところだと思います。

:適正な伸び幅の中にきちんとはまり続けている、というのは大事なことですよね。

本橋 隆司 フリー編集者・ライター

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もとはし たかし / Takashi Motohashi

出版社勤務を経て、フリーの編集者・ライターとして雑誌やWEBサイトなどで活躍中。立ち食い蕎麦好きが高じて、2013年に『立ち食いそば図鑑 東京編』、2014年に『立ち食いそば図鑑 ディープ東京編』を制作して出版。蕎麦愛好者コミュニティ「東京ソバット団」の団長も務める。

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