「ダウ暴落、1ドル=65円時代が来る」と読む理由 NY在住「伝説のトレーダー」若林栄四氏に聞く

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さて、アメリカでは経営者を評価する指標としてROE(自己資本利益率)が重視されます。これは自己資本に対してどれだけの利益を上げたのかを測る指標で、純利益を自己資本で割って求められます。この数字をいかに最大化するかに、アメリカの企業経営者は奔走するわけですが、それはROEが上昇するとボーナスとしてストックオプションがもらえるからです。

借金による自己株買いで米企業の体力は落ちている

ROEを上昇させるためには、分母の自己資本を下げるのが手っ取り早い方法です。自己資本を減らすには発行株数を減らせば済むので、アメリカの会社は積極的に自己株買いを行います。自己株買いをすれば、株式市場では需給がタイトになって株価が上昇しやすくなり、かつROEも上昇するわけです。実際、自己株買いを発表すると、その会社の株価は平均で4.2%上昇するというデータもあります。こうして株価が上昇したタイミングを狙って、経営者などのインサイダーは手持ちの株式を一斉に売って現金化するのです。

これはまさに利益相反以外の何物でもありません。そもそも1982年以前は、自己株買いは相場操縦にあたるということで事実上禁止されていました。それがレーガノミクスの規制緩和によって実質的に認められたという経緯があります。

こうしてどんどん自己株買いを行えば、会社の自己資本はどんどん減少していきます。つまり資本が脆弱化していくのです。そのような状態で大きな経済危機が到来したら、会社は危機に対処しきれず、倒産に追い込まれる恐れがあります。自己株買いによる株価上昇に浮かれている合間に、実はどんどん会社の体力は落ちているのです。

2008年から2017年までの10年間で、S&P500のうち466社が約4兆ドルもの自己株買いを行いました。2018年はドナルド・トランプ大統領による不必要な企業減税でキャッシュリッチになった会社が、1兆ドルを超える自己株買いを行っています。

今のアメリカ株は壮大なバブルといってもよいでしょう。そしてバブルはいつか必ず崩壊します。問題は「いつ崩れるのか」、ですが、この点について私はかねて黄金律、つまり正五角形を形作る数字に興味をもち、その研究を行ってきました。

正五角形を形作る数字とは、一辺の長さが38.2、対角線の長さが61.8、正五角形の高さが59、この高さを分割した36.5と22.5、内角度の総和が540、といったもので、相場の日柄を見る際に、これらの数字が深く関係してきます。

ちなみにNYダウは2009年にリーマンショック後の安値を形成しましたが、これは1973年1月から10年間破られなかった高値1067ドルを起点にして、36.5年目の出来事でした。過去の経験則上、NYダウの大きな底は、大きな天井からの黄金律の日柄で示現するケースが結構見られます。

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