高齢ドライバー「認知機能検査」知られざる中身 世界でもめずらしい検査の仕組みとは?
具体的には、「認知症のおそれがある(第1分類)」と判定されたドライバーは、医師の診断が必要となりました。現在、認知機能検査は年間200万人以上が受検しています。
検査内容は、①時間の見当識、②手がかり再生、③時計描画の3つに分けられます(下のイラスト参照)。
1つ目の「時間の見当識」は、現在の年・月・日・曜日・時分を認識して書く問題です。自分が置かれている状況(日や時間、場所など)が正しく認識できるかを検査します。時間がきちんとわかるかは、認知機能にとってとくに重要な指標であり、見当識の障害は、認知症を代表する症状の1つといえます。
2つ目の「手がかり再生」は、少し前に覚えたことを思い出す「短期記憶」が機能しているかを確認します。新しい記憶から忘れてしまうのは認知症の症状です。手がかり再生は配点の6割以上を占めており、非常に重視されています。
3つ目の「時計描画」では、文字盤や針を描くことで「脳の複合的な働きに問題がないか」をみています。主に、視空間認知や構成能力、数の概念に関する認知能力を調べることができます。心理学検査でもよく使われているので、ご存じの方もいらっしゃるでしょう。
点数が低いと免許取り消し・停止の可能性も
検査結果は3つに分けられます。100点満点中、76点以上であれば記憶力・認知機能に心配がない第3分類とされます。また、49点以上から76点未満であれば、記憶力・認知機能が少し低くなっている第2分類と判断されます。そして、49点未満であれば、記憶力・認知機能が低くなっている第1分類となり、認知症の疑いがあると簡易的に判断されます。
検査自体は、十数年のデータに基づいた多くの基礎研究を参考にして、誰でも簡単に検査できるよう警察庁がまとめたものです。検査の結果で認知症と診断されるという医学的な検査ではないですが、医療現場で使われている認知機能検査(長谷川式認知症スケールやMMSE)と比べ、運転に必要とされる判断力や記憶力に特化しています。結果を100点満点で表現することで、自分の認知機能がわかりやすく理解できます。
出題パターンもいくつか用意されているため学習効果が薄く、検査の実施には医療知識を持った専門スタッフが不要とされるなど、幅広い人や場所で行う汎用検査としてとてもよくできていると思います。
警察庁の調べでは、死亡事故を起こした高齢者の約半数が、この検査において第1分類の「認知症のおそれあり」または第2分類の「認知機能低下のおそれあり」と判定されています。これらのデータから、警察庁は「認知機能の低下が死亡事故の発生に影響を及ぼしているものと推察される」と判断しています。
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