戦略のパンフレットやほかの資料は、随所で県と市が肩を並べる形で記述されており、県・市それぞれのサイトの文章からも、緊密な連携を築こうと務めている様子がうかがえる。整備新幹線の沿線で、同県と地元市町村の意識や方向性がかみ合わない例は少なくない。福井市と福井県は他地域に比べて、かなり踏み込んだ関係性づくりを目指している印象を受けた。とくに今年に入り、連携が緊密さを増しているようだ。
福井市は2019年4月、中核市に移行するにあたり、周辺10市町村とともに「ふくい嶺北連携中枢都市圏」を形成した。新たなステージをどう生かし、新幹線開業を契機とした「地域のバージョンアップ」を進めるか。
地元の期待感を、地価が映し出している。福井市の商業地の平均地価は2018年、プラス0.3%と26年ぶりに上昇し、「バブル期以来」と話題を呼んだ。翌年2019年もプラス0.5%と、2年続けての上昇となった。
在来線特急の行方は…
ただし、懸案もいくつかある。とくに話題を呼んできたのは、金沢と大阪を結ぶ特急「サンダーバード」と金沢と名古屋を結ぶ特急「しらさぎ」の、JR北陸線乗り入れ問題だ。
北陸新幹線には当初、新幹線と在来線を行き来できるフリーゲージトレインが投入される予定だった。しかし、開発は暗礁に乗り上げ、国は2018年8月に投入を断念。かの事例で、整備新幹線と併走する在来線特急列車が廃止されてきた流れから、敦賀開業後には、敦賀―金沢間の特急も廃止される公算が大きくなった。
地元は「サンダーバード」「しらさぎ」の福井駅乗り入れ継続を強く求めてきた。しかし、JR西日本は否定的だ。このまま敦賀以北の「サンダーバード」「しらさぎ」が廃止された場合、乗り換えの手間と時間が、北陸新幹線開業の効果を一定程度、相殺してしまう可能性もある。そもそも、北陸新幹線がこれらの特急に代わる役割をどう果たすか。駅の立地やダイヤから見て、先行きの不透明さは否めない。
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