新幹線延伸で「恐竜王国」福井はどう進化するか 開業準備が着々、在来線特急の行方に懸案も

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新幹線福井駅のスリムさには理由がある。

福井駅東口の「拡張施設」建設現場フェンス=2019年6月(筆者撮影)
北陸新幹線の展示を紹介する内田さん=2019年6月(筆者撮影)

当初は3階建ての駅舎と高架を造り、2階に第三セクター・えちぜん鉄道(当時は京福鉄道が運営)が、3階に北陸新幹線が乗り入れる構想だった。しかし、事業費などを考慮し、建物を2階建てに変更した結果、限られた敷地内に、えちぜん鉄道と新幹線の高架を並べることになったのだ。

えちぜん鉄道は高架化の途中、2015年9月から2018年6月まで、北陸新幹線・福井駅部の高架を借りて営業し、「新幹線高架を走る在来線」と話題を呼んだ。えちぜん鉄道の高架の完成後、福井駅部はレールが取り払われ、今は北陸新幹線の完成に向けて最後の工事を待っている。

「1面2線の新幹線駅はどうしても手狭です。対策として東口に、新幹線ホームに直結する『拡張施設』を整備します。待合・休憩スペースや観光案内所が入ります」。一帯を案内してくれた福井県新幹線建設推進課の内田敏明さんが解説する。同課は工事の進捗状況などを伝える「北陸新幹線レポート」を2017年から定期的に刊行し、経緯の確認に役立った。

「待望ムード」まだ先?

福井県庁ロビーではちょうど、新幹線工事を担当する鉄道・運輸機構が作成した、北陸新幹線の解説パネルと駅舎模型が展示されていた。新たに開業するのは、石川県の小松、加賀温泉、福井県の芦原温泉、福井、南越(仮称)、敦賀の6新幹線駅だ。ロビーにはこのうち、福井県の4駅の模型が並び、各駅舎の特徴を確認できた。

福井駅の模型。中央部手前のテラス状の部分が「拡張部分」(福井県庁にて)=2019年6月(筆者撮影)

福井駅は「太古から未来へ 〜悠久の歴史と自然がみえる駅〜」をコンセプトに、近隣の永平寺や一乗谷朝倉氏遺跡の唐門をモチーフとして、福井の歴史を感じさせるデザインを採り入れたという。北陸新幹線と在来線、えちぜん鉄道の高架が束ねられた外観が、駅整備新幹線の足跡を感じさせる。

福井県の資料によると、東京駅―福井駅間は、現在の「乗り換え1回・所要3時間25分」から、「乗り換えなし・2時間53分」に短縮される。大きな効果が生まれた東北新幹線・八戸開業時と、ほぼ同じ環境にある。とはいえ、街の空気や人々の会話に、待望ムードがにじみ出るにはまだ早いようだ。あと3年半、多くの市民の生活感覚では、新幹線開業は「1サイクル先」の出来事に違いない。

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