森ビル、虎ノ門「第2ヒルズ」に勝算はあるか 総事業費は六本木の2倍、30年計画の成否
東京都心に新たな「ヒルズ」が生まれようとしている。
8月22日、森ビルは新たな再開発事業である「虎ノ門・麻布台プロジェクト」の概要を発表した。港区虎ノ門、麻布台、六本木にまたがる約6万4000平方メートルもの敷地に、3棟の超高層ビルがそびえ立つ。最も高い棟で高さは約330メートルと、2023年の竣工時点で日本一となる。
総事業費は六本木ヒルズの2倍の5800億円
これまでのヒルズで培ったすべてを注ぎ込んだ「ヒルズの未来形」――。森ビルがこう豪語する今回の事業は、かの六本木ヒルズをも上回る規模となりそうだ。
開発予定地は東京メトロ南北線・六本木一丁目駅と日比谷線・神谷町駅の間にまたがり、アルファベットの「T」のような形をしている。3棟のビルは主にオフィス・住宅・ホテルで構成されるが、延べ床面積は約86万平方メートルと、六本木ヒルズの約76万平方メートルを凌駕する。想定される就業者数や居住者数も上回り、総事業費に至っては約5800億円と約2700億円かかった六本木ヒルズの2倍を超える。
メインタワー付近には、約700人の生徒が学べるインターナショナルスクールを誘致した。「ヒト・モノ・カネを呼び込むには、外国人が働き、住み、学べることが重要だ」(森ビルの辻慎吾社長)。虎ノ門や六本木エリアには外資系企業が集積し、今回のヒルズのオフィステナントも半数が外資系企業になる予定だという。働くだけでなく、子どもも育てられる機能を付加することで、海外の企業や外国人が集まる拠点にしていきたい構えだ。
今回のプロジェクトの歴史は1989年にまでさかのぼる。当時の虎ノ門エリアには古い木造住宅や小規模なビルが密集し、現在のようなビジネス街ではなかった。この一帯にオフィスビルを所有していた森ビルは、インフラ整備の必要性に目をつけ、再開発事業に着手。1989年に、街づくりの方向性を議論する地元住民主体の協議会が設立された。
一帯の地権者は区分所有者を含めて300人以上にのぼり、権利関係の整理や街づくりへの合意形成は難航した。さらに開発途中でバブル崩壊の憂き目にも遭い、2001年には一部エリアを分離独立させ、別の再開発事業として先行させることを余儀なくされた。2012年に竣工したアークヒルズ仙石山森タワーがそれだ。こちらも工事を始めようとしたさなかにリーマンショックに襲われ、建築工事の入札が不調に陥るなど波乱に満ちた事業だった。
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