香港デモは「第2の天安門事件」を招くのか?

本当の山は「9月以降」に来るかもしれない

ツィッターの中に、「818不再分『和』『勇』」と書かれたプラカードが目についた。もうハト派(和)もタカ派(勇)もない、今日からはまた一緒だ、と言っているのだろう。内部の路線対立は修復され、香港デモはまだまだ続きそうである。

なぜ香港はここまで盛り上がっているのか。今回の発端は「逃亡犯条例改正案」であった。本来は「犯罪者を他国と同様、大陸本土にも引き渡すことができるように」、という法律上の穴をふさぐ、いわばテクニカルな措置であったはずだ。

「追い詰められる」香港、北京の認識と噛み合わず

ところがそれが琴線に触れてしまった。もともと香港人の大多数は、国共内戦時代に大陸から逃げてきた人たちの子孫である。今までは英国式の司法制度に守られ、自由な経済活動によって繁栄してきた。中国も香港を上手に利用して、お互いに「持ちつ持たれつ」の関係を維持してきた。しかし、それもいつまで続くかわからなくなってきた。ひょっとすると、自分やその家族が「ある日突然、大陸に送られてしまうかもしれない」のだ。

思えば1997年の香港返還の際に、「一国二制度」の名の下に、向こう50年間は今の制度を変えない、と中国は約束した。しかしそれから既に22年が過ぎている。2047年には、いよいよ香港も「一国一制度」になるかもしれない。そして上海には金融機能が育ち、深圳はハイテク生産基地となり、香港の値打ちは相対的に低下している。

この間に、金持ちはカナダや豪州など海外に移住してしまった。あるいはいざというときに備えて、脱出用のパスポートや海外資産を有している人もいる。そんな中で、香港から出て行く当てのない人たちは、追い詰められた気分になっているのではないか。

何しろ北京の影響が強まるにつれて、よほどのコネがない限り出世の道はおぼつかなくなってきた。しかも本土の金持ちが香港に投資するから、不動産価格は普通の若者には手の届かないところまで上昇してしまった。うん、なんだか耳元で、ミュージカル『レ・ミゼラブル』の「民衆の歌」が聴こえてくるようではないか。

北京から見れば、この状況は歯がゆく思えるだろう。これまで中国共産党は、香港における一国二制度はうまく機能している、反対する人もいるがそれはごく少数だ、と内外に説明してきた。それは大間違いであることが明らかになってしまった。

しかし中国国内では、香港への同情が高まっているわけではない。「CIA(米中央情報局)がカネを払ってデモを起こさせている」式の噂が流れ、環球時報は「陰で西側諸国が支援しているカラー革命だ」などとウラジミール・プーチン大統領みたいなことを書いている。「香港の奴らはあれだけ特別扱いしてやっているのに、いったい何が不満なんだ」、と理解不能らしいのだ。

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