日本人は温暖化に伴う食料危機をわかってない

平均気温2℃上昇で食料不足は深刻化する

そもそも安倍政権は政権発足以来、農政改革を積極的に展開してきたが、2019年の参院選では農業従事者が多い東北で自民党が惨敗するなど、現場の人々にとっては「改革」ではなく「改悪」に近かったようだ。

詳細は省くが、農政の中長期的な指針を示す「食料・農業・農村基本計画」の見直しが2020年3月に迫っており、今後の農政改革の方向転換を迫られるかもしれない。コメ農家への補助金廃止は、むしろ遅かったぐらいだが、農業の成長産業化に向けて、主食用コメの生産調整、農業委員会、農業協同組合の抜本的な見直しによって実現させようとした。

しかし、国家戦略特区を作って農地の法人化を推進する政策をとったものの、規制緩和が中途半端だったことなどによって市場参入する企業は少なく、ほとんど農地の流動化は進んでいない。その一方で、耕作放棄地は増え続けている。

種子法廃止は何のためだったのか?

加えて、安倍政権は1950年代はじめにスタートした「主要農作物種子法」いわゆる「種子法」を2018年4月以降廃止している。種子法は、野菜を除いた種子の安定的生産および普及を促進するために設けられた法律で、コメや大豆、麦の種子の生産を国が審査して、優良な種子の安定的な生産を国が補償するものだった。

種子法の使命は終わったとして、国が監視、管理するのではなく民間の自由な市場原理に委ねようというものだ。一部企業の独占を許すのではないか、あるいは多国籍企業に独占されるのではないか、そして遺伝子操作などのリスクにさらされるのではないか……。そんな懸念や指摘があったにもかかわらず、簡単に種子法廃止が決まってしまった。メディアがあまり注目しなかったことが要因の1つだったかもしれない。

農業生産の担い手となる若者が減少したことから、非農業者からの出資比率を増やすことで、農業を近代化させようという意図だが、そうした方針ははたして農地の少ない日本にとって適しているのだろうか。日本の国土の7割は森林だが、森林にメスを入れないまま農地を近代化するシナリオでよかったのか。

同じことが種子法廃止でも指摘される。日本の風土に合った種子が多国籍企業の管理下に置かれてしまう。そんなリスクが安倍政権によって生まれてしまった。こうした農政改革が、はたして異常気象による世界的な食糧不足に対応できるのか。

モンサントを買収したドイツの「バイエル」、アメリカの「デュポン」、スイスの「シンジェルタ」の3社は「種子メジャー」と呼ばれ、今後50年間の気候変動に耐えうる種子の開発を期待されている。70億人を超す人口を世界はどうやって養っていくのか。

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