日本人は温暖化に伴う食料危機をわかってない 平均気温2℃上昇で食料不足は深刻化する

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ちなみに、穀物自給率の高い国というのはオーストラリア279%(2013年、以下同)を筆頭に、カナダ202%、フランス189%、アメリカ127%、ドイツ113%と続いている。これをカロリーベースの食料自給率を調べてみても、ほぼ穀物自給率と似たような数字で、高いのはオーストラリア、カナダ、アメリカ、フランスといったところになる。

むろん、日本の穀物自給率37%という数字が極端に低いわけではない。世界には0%というところも数多くある。香港やマカオをはじめとしてモルジブなどは0%になっている。

しかし1億人を超えるような人口を抱える国ではそうそう多いわけではない。

安倍政権はさまざまな「農政改革」を実施しているが…

農林水産省は、ホームページで「食の未来を支える食料自給率」というページを作って国民に呼びかけているのだが、食料自給率を高めるためにできることの中身が何とも不安になる。

「『いまが旬』の食べものを選びましょう」
「地元でとれる食材を日々の食事に活かしましょう」
「ごはんを中心に、野菜をたっぷり使ったバランスのよい食事を心がけ、しっかり朝ごはんを食べましょう」
「食べ残しを減らしましょう」
「自給率向上を図るさまざまな取り組みを知り、試し、応援しましょう」
(※)食糧自給率向上のための5つのアクションより

などとなっている。

本当にこれで1億2000万人の国民の食料を確保できるのだろうか。アメリカから安い牛肉を買わなければならない状況に加えて、TPPやFTA、EPAといった自由貿易協定の中で、日本国内の農家は国際競争にさらされている。

人口減少の急激な進行で農業後継者不足という問題も、極めて深刻化している。農業就業人口は、1990年には482万人(農林水産省調、農業構造動態調査より)だったのが、2018年には175万人(同)にまで減少している。平均年齢も66.6歳と高齢化が顕著になっている。

現政権の農業に対する姿勢を見ると、安倍政権はさまざまな形での「農政改革」を実施している。岩盤規制にメスを入れる、として長年続いたコメ農家に対する補助金も廃止した。しかし、農政改革のどれもが日本の農業を衰退させる法改正でしかない、という指摘も受けている。

現実問題として、49歳以下の若手新規就農者数が2018年は1万9290人となり、5年ぶりに2万人を割り込んだことがわかった。新規就農者全体は、前年と同水準の5万5812人だったが、2015年~16年には6万人台だったことを考えると、日本の農業の跡を継ぐ人間の減少がここに来て目立ってきたことを意味している。

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